KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年7月号
56/124

高エネルギー加速器研究機構の多田と申します。本欄にて一年間お世話になります。どうぞよろしくお願い致します。同機構とは、元々の名前を高エネルギー物理学研究所と言いまして、一九七一年に設立された研究所です。僕が専門とする素粒子物理学の実験には、巨大な実験施設が必要とされ、それは最早ひとつの大学では建設も維持も不可能なことから、ここでまとめて面倒を見て、各大学の教官や学生たちが実験にやって来る、そういう目的でつくられた研究所です。そのため、「大学共同利用法人」という法人格を持っています。本欄にて、十二回にわたり、そこで行われている研究についてお話しをさせて頂き、それを通して、読者のみなさんに、素粒子物理学の世界を垣間見て頂こうと思っております。しかし、素粒子物理学なんてほとんどの方にはあまりにも馴染みのない分野ですよね。いきなりその話をしても、誰もついて来て下さらないかも知れません。そこで、最初は、素粒子物理学者であるこの僕が、どんな人間なのかを知って頂くために、子供の頃の話から始めてみたいと思います。僕の大学・大学院の同期や、職場の同僚には、親が上流階級の人で、本人も幼い頃から高い教育を受け、「子供の頃から○○を目指していた」といった高い志を抱いたエリートであった人が多いです。ところが、僕はそうではありませんでした。僕には両親の他に二人の姉と一人の兄がいますが、その中で、四年制大学に進んだのは僕だけでした。父は自動車の整備士で、母は普通の専業主多田先生!ニュートリノと 宇宙のはじまり教えて 新連載〜第1回〜 多田先生の少年時代宇宙のはじまりとは―。最初に存在した最も基本的な物質、つまり素粒子を組み上げて恒星や銀河系をつくり、宇宙は出来上がったと考えられています。素粒子のひとつニュートリノを研究することで、なぜ宇宙の始まりが解明できるのか、この連載で素粒子物理学者の多田将先生に教えていただきます。56

元のページ  ../index.html#56

このブックを見る