KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年7月号
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ヌとは真逆の、笑顔を封印した冷酷無比な表情はお茶の間を凍り付かせた…。そう伝えると、「自分では納得できる演技じゃなかったんですよ」と返してきた。お道化た表情で語る目の奥には「もっとできたはず…」と現状に満足せず悔しがるストイックさが垣間見えた。「もうすぐ65歳ですが、70代も舞台に立っていたい。目標は生涯現役ですから」来年の「ワハハ」結成40年はまだ一つの通過点に過ぎないようだ。60代は通過点〝健康第一〟の話で名前が出てきた大谷翔平は先日開催されたWBCの決勝戦でメジャーリーグ選抜の米代表チームと戦う直前、日本代表選手に向かってこう宣言していた。「今日はメジャーの選手へ憧れるのはやめましょう。勝ちましょう」と。常に高い目標を持ってチャレンジし続けなければ道は開けない―ということを日本チームは世界一となり証明した。「どの世界も同じではないでしょうか」と久本さんは言う。「垣根の魔女」の演出家、錦織一清さん(元少年隊)と話していて「喜劇が一番難しい。そして喜劇は奥が深い」と意気投合したという。この話を裏付けるドラマのワンシーンが頭をよぎった。昨年放送されたサスペンス「インビジブル」で主人公の刑事を追い詰める悪役を久本さんが演じていた。普段のコメディエン「心配ないですよ。彼は今度は〝シン梅ちゃん〟になるみたいですから」一体どこまでが、お笑いのネタなのか?「さらに喰さんと親交が深かった漫画家、赤塚不二夫さんのキャラクターが登場する〝赤塚歌舞伎〟や、これまで人気の〝農村パフォーマンス〟の漁村版、〝漁村パフォーマンス〟も披露する予定ですよ」新しいネタの構想を聞いているだけで吹き出しそうになるが、これが「ワハハ」が40年の間に築きあげた唯一無二の笑いの源泉だ。「舞台がどうなるのか、その全貌はいつも喰さんの頭の中にしかない。役者はいつも試されている」と語る。一方で老舗劇団となった「ワハハ」が抱える課題も挙げた。「若いメンバーは喰さんに認められたい一心で稽古しているようなところがある。でもそれではだめなんです。私や柴田は、いつも〝喰さんの求める笑いを越えてやろう〟と思ってやってきましたから」WAHAHA本舗全体公演『シン・ワハハ』演出:喰始出演:久本雅美、柴田理恵、佐藤正宏梅垣義明、大久保ノブオ、タマ伸也、ほか日時:7月29日(土)15:00開演  7月30日(日)14:00開演会場:森ノ宮ピロティホール料金:指定席 ¥8,800(税込)  ※未就学児入場不可問合せ:キョードーインフォメーション0570-200-888(11:00〜18:00日祝休)WAHAHA本舗公式HPhttp://wahahahompo.co.jp/26

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