KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年7月号
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い。まるで星の並びによって現れる星座のように。(横尾忠則現代美術館学芸員 小野尚子)この512ページの大著『原郷の森』のそもそもの発想は、実際に僕の身に起こった超常的な体験を小説の原点にしている。1970年頃だったか、50年ほど前のある日、僕は、故柴田錬三郎さんの時代小説の挿絵を連載するために、作家の柴田さんと東京の高輪プリンスホテルに2人とも1年間カンヅメになって仕事をすることになった。そんなある日の午後、ホテルの部屋のベッドの上で、寝そべってテレビを観ていた。その時、急に身体がスーッと浮き上がった。最初は身体の具合が悪くなったのかな、と思ったのだが次の瞬間、僕はホテルの部屋からいきなり別の場所に移動してしまった。その時は、何が自分に起こったのか理解できなかったが、いわゆるテレポーテーションが起こったのである。そして、僕が移動したのは巨大な宇宙船の内部だった。天井も空も区別できないほど高く、宇宙船の奥行きも計り知れなオープニングの来客者には原則として、本『原郷の森』の装幀と同じボーダーシャツを着用していただいた。写真の前から2列目の右端に浅田彰さんの姿が見える1818

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