2020年に公開された監督作「一度も撃ってません」で初めて二人の親子共演を実現させたのが、長年、佐藤とタッグを組んできた阪本監督なのだ。色褪せないチャレンジ精神現代の旬の若手俳優3人が、幕末をたくましく生きる若者の青春を体現する。阪本監督に、「若い三人には一体、どんな演技指導を?」と聞くと、「舞台は江戸時代。もちろん時代考証をしていますが、実際には誰も見たことのない世界でしょう。だから3人にはできるだけ自分で考え、自由に演じてほしかった」と話し、こう続けた。「現代劇と違って、逆に時代劇は自由に撮れるから面白いんですよ」と。34年以上にわたり、過去作とは違う作品を…と挑み続けてきた重鎮監督の30作目も、やはりチャレンジングな作品だった。「70歳までに後3本は撮れるかなあ…」。静かにこうつぶやいたが、取材するたびに新作の構想を聞いていると、毎回、次から次へとアイデアがあふれ出し、とても3本で満足するはずはない。それで終わるはずがない…と思う。そう向けると、「確かに、まだ撮っていないテーマはたくさんありますね」と目を細めて笑った。フルカラーでもモノクロでも。撮影手法は違っても創作の根底に流れるものは変わらない。常に低い視座を貫いてきた。だが、常に、その視線ははるか遠くを見据えている。『せかいのおきく』(日本 2023年 90分)脚本・監督:阪本順治 出演: 黒木華 寛一郎 池松壮亮 眞木蔵人 佐藤浩市 石橋蓮司 他配給:東京テアトル/U-NEXT/リトルモア©2023 FANTASIA2023年4月28日(金)より公開中シネ・リーブル神戸、シネ・リーブル梅田ほか【公式SNS】映画公式HP:sekainookiku.jp公式Twitter:@okiku_movie27
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