KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年6月号
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り終えることができる。そんな心強いチームでしたからね」64歳の阪本監督を中心に、撮影監督が65歳の笠松則通、録音監督が71歳の志満順一、照明担当が63歳の杉本崇、そして美術監督が57歳の原田…。これまで数えきれないほどの過酷な撮影現場を経験してきた百戦錬磨の猛者たちが太秦に集結していたのだ。実際、この90分に及ぶ長編作品を、「計約12日間ですべて撮り終えた」というから驚く。しかも、それが阪本組が初めて挑むモノクロ時代劇だったとは、この話を聞かなければ、誰も信じないだろう。スタッフ同様、若い3人の俳優の脇を固めたのもまた邦画界を支え続けてきた石橋蓮司、佐藤浩市、眞木蔵人ら経験豊かなベテラン俳優陣。どんな過酷な撮影現場でも駆けつけてくる阪本組の頼もしい常連たちだ。4月号の「物語が始まる」で登場した寛一郎と佐藤浩市の親子共演も話題を集める。葛藤し、不条理に抗いながら生きる市井の人々を主人公に映画を撮り続けてきた。「低い視座から、しかも“汚いところ”から社会を眺める映画なら自分にも撮れるかもしれない…」一気にプロジェクトが動き始める。原田さんと今作の映画化を構想した地、太秦撮影所に組んだ長屋のセットで撮影が始まった…。「パイロット版の短編。つまり、第7章の撮影ですが、与えられたのは実はたったの一日。それも午前3時から午前6時まで。といっても時代劇は準備の時間がかかるので、実際はもっと短い時間で撮影しなればなりませんでした」過酷な“向かい風”の中での撮影だった…かのように見えるが、阪本監督は一笑に付しながら、こう語った。「この現場のスタッフは平均年齢が60数歳というベテランチーム。たとえ、どんなに撮影時間が短かかろうが、その時間内ですべての必要なカットを撮る…。この循環型社会がなければ当時の人口約100万人が暮らす江戸の生活は維持できなかったという事実…。当初、「果たして自分に撮れるだろうか?」と迷ったテーマだったが、この“視点”を企画書の中に見つけたとき、考えが一変する。監督デビュー作「どついたるねん」では、生死の淵を彷徨い、そこから生還するプロボクサーを、「王手」では大阪のアンダーグラウンドでしのぎを削る将棋のプロ棋士の壮絶な人生を描きあげている。それ以後も、常に、人生にもがき苦しみながら26

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