KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年6月号
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足を運んでみたいという気持ちにさせるだけでも、大成功ではなかったかと思う。この展覧会を担当した平林恵は、主役級の作品が全部、都現美の『GENKYO』展に出てしまったために、二番手、三番手の、日頃あまり陽に当たっていない作品を掘じくり出して、僕も忘れているようなムカシの作品などを、まるで虫干しをするように、暗い倉庫から引っ張り出してきて、陽に当ててくれたために、観客もかつて見たことのないような作品を目にすることになって、大喜びされたのではないかと僕は推察するのであるが、結果は如何なものであったでしょうか。展示作品の選択は、なんでも3人の学芸員がそれぞれ神戸で始まって 神戸で終る ㊴『GENKYO』展をすることになってしまったので、わが横尾忠則現代美術館所有の代表作が、ほぼ全部、都現美の『GENKYO』展に出品せざるを得なくなってしまった。なので「危機一髪」だというのである。他人事のように僕は言うかもしれませんが、人間は、追い詰められた方が底力が出るので、僕は全く心配していなかった。きっと、知恵を絞った、アッと言わせるアイデアを出してくると思っていたので、むしろ期待していた。この展覧会タイトルは、僕の作品を語ったものではなく、学芸員自身の心境を語ったもので、展覧会名としては傑作中の傑作である。何だかわからないけれど、ぜひ美術館に第27回展『Curators in Panic 〜横尾忠則展 学芸員危機一髪』は、学芸員のあるったけの知恵を絞った前代未聞の企画展であるらしい。「らしい」なんて無責任な言い方をしましたが、学芸員からすれば、恨みつらみの企画展であったと思われます。まあ、わかり易く言えば、学芸員ヤケッパチの自虐展であったらしい。何しろ、僕は恐ろしくて、この展覧会を見ていないのです。では、なぜこの展覧会名が「学芸員危機一髪」かということを説明する必要がありそうです。つまり、こういうことです。この27回展の同時期に、僕は東京都現代美術館で、過去最大のスケールの大きい展覧会Tadanori Yokoo美術家横尾 忠則撮影:山田 ミユキ16

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