KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年6月号
100/136

兵庫県立災害医療センターと神戸市立医療センター中央市民病院にあり、多発外傷や重症頭部外傷の患者さんが搬送されます。私が研修医の頃はかなり重症の頭部外傷患者がよく搬送されていましたが、幸い最近は交通ルールの徹底が功を奏したのか、交通事故による頭部外傷緊急手術はほとんどなく、高齢者の転倒による頭部外傷などが増えている印象です。―てんかんの外科的治療も可能なのですか。てんかんは薬による内科的治療が主ですが、大人になってから発症した患者さんで脳に腫瘍や出血、梗塞があるケースでは手術で原因を取り除くと発作が治まることがあります。2022年5月、神大病院に兵庫県内では初めての「てんかんセンター」が開設され、脳神経内科の松本理器先生を中心に脳神経外科、小児科、精神科神経科の先生方が集まり、薬ではコントロールが難しくて困っておられる患者さんにも適切な治療が提供できるようになりました。ん剤で弱らせて大きくならないように維持します。―脳腫瘍の原因は?予防法はあるのですか。何らかの感染が関係しているなど幾つかの説もありますが、はっきりした原因は分かっていません。従って予防法は特になく、何に注意をしたらいいのかも分からないのが現状です。―脳には遺伝的要素がある病気もあるのですか。神経線維腫症は遺伝性の腫瘍で、体のあちこちにできますが、脳の中にも発生します。神経線維腫症は日本人の3千人に1人程度が発症するといわれ、常染色体異常が原因です。神経症状が出た場合は外科手術で腫瘍を取り除きます。小脳や脊髄に血管芽腫という腫瘍ができるフォン・ヒッペル・リンドウ病も比較的多くみられる遺伝性の病気です。―大学病院には重度の外傷患者さんが搬送されるのですか。神戸市には三次救急の救命救急センターが神戸大学以外に―認知症も手術で治る場合があるのですか。 一般的なアルツハイマー型やレビー小体型、血管障害型認知症を手術で治すことはできません。吸収力低下などで髄液が貯留し脳の働きが低下する正常圧水頭症は認知症を発症し、髄液を抜き取ると症状が改善します。手術をする場合は、脳室から腹部にチューブを通して常に髄液を腹腔に流すシャント術を行います。高齢者で脳萎縮が強い場合は、萎縮による脳室の拡大か水頭症による脳室の拡大かを見極めるのは難しい診断です。―脳が委縮する認知症を予防する方法はあるのですか。頭を使って脳の血流を良くすると脳は活性化して認知症になりにくくなります。実際に活動している脳の部分は血流が増加することがMRIで確認できます。色々なことに興味を持って、外に出て、会話を楽しんで…などよく言われていることは一理あると思いますよ。―神大病院だからできる最先100

元のページ  ../index.html#100

このブックを見る