KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年5月号
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足させることはきわめてむずかしい。下手をすると全員が不満を持つ。三人の捜索隊の前にニキビが出てきて、それぞれを大臣に任命したあと、実力者の「牛五郎」は副大統領にするつもりだと伝言する。牛五郎は芋がカマスに三俵自由に使えると知り、「東京都議会の議長並みじゃねえか」と喜ぶ。そして三太に対し、「弱い者を助けるのが政治だと思ってるんだ。固すぎるナ」と批判する。おりしも三太が「小さなベビィを普通の子供のように働かせてはかわいそうだ」と、保育所の造設を提案すると、ベビィたちは賛成するが、力の強い子どもたちがそれを抑え込み、政権交代を要求する。女の子とベビィは反対するが、突然現れたニキビやねずみ男の暴力で「革命」が成就する。そこでこどもの国は〝くさった国〟になり、「やたらに官職ばかりふえてあそんでる人間が多くなった上に、実力者で勝手に芋を分配するようになったんだ」と、ひもじいベビィたちが三太のもとに亡命してくる。三太は芋に目がくらんで肥溜めに落ちたねずみ男を助ける代わりに、協力を約束させる。「大きな胃袋を持った実力者をなだめなきゃア何一つできないのが現実なんだ」と言うねずみ男に、三太は「じゃア財界の実力者のキゲンさえとれば病人や赤ん坊はどうなってもいいというのか」と、また生々しいセリフを吐く。かたやニキビの「くさった国」ではベビィのレジスタンスなど問題が山積みになり、勲章を作ったりしてごまかそうとするが、三太率いるベビィ軍が攻めてきて、ニキビは軍隊の総動員を命じる。牛五郎が「大臣と大将だけしか集まりません」と報告すると、「それで充分だ」と戦闘がはじまる。三太軍は有利に闘うが、寝返ったねずみ男にだまされ、国を二分することで和平を結ぶ。そこに強大な隣国「たぬきの国」の脅威が高まり、ニキビは「お互いにくさった政治で固くむすばれている」と、たぬきの国に接近するが、再度寝返ったねずみ男の説得で、三太側につき、たぬき軍を撃退して大団円となる。ニキビも改心し、三太に協力することを約束して、メデタシメデタシとなる。しかし、私はここで首を傾げる。漫画はハッピーエンドで終るが、現実は終らない。いったんは健全な国になっても、やがてまた以前と同じ問題=力の強い子どもの不満が高まるだろう。〝真の平等とは何か〟という命題には、答えが出ていないのだから。「冴えてる一言」~水木しげるマンガの深淵をのぞくと「生きること」がラクになる~定価:1,980円(税込み)光文社 久坂部 羊さんの新刊45

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