三人が捜索に出かける。すると、メガネ出っ歯のゴマが現れ、空腹の三人を焼き鳥と焼き芋で誘惑する。「おめえ達のような力の強い子供はよけいカロリーをとらにゃアいかん」そこにねずみ男が登場し、「そうだ!小さな弱いベビィが一日芋一個で、力の強いお前達も芋一個の配給……これが果たして真の平等かな?」と疑問を投げかける。前編の最後でねずみ男が言った「くさった政治」とはいかなるものか。それを象徴するのがゴマのセリフだ。「『悪』に対する免疫性こそ大政治家の資格です」「それに政権にはハエとウジムシがつきものですよ」一方、三太が大統領になったこどもの国では、芋の配給が増えたと、ベビィたちが喜んでいる。さらにニキビの隠し芋をさがしに、実力者の子どもここに〝平等〟という複雑な概念が持ち出される。全員に同じものが配られれば、それはある意味平等だが、働きに応じた分配にはならない。しっかり働いても働かなくても同じ配給で、人はしっかり働くだろうか。生産性を高めるには、働きに応じた分配=能力主義が必要だが、そうすると、弱い者や働けない者が飢えてしまう。その分配をコントロールするのが政治だが、全員を満知られざる 水木しげる水木しげる生誕100周年記念子どもに社会を学ばせる教科書にしたい『こどもの国』後編PROFILE久坂部 羊 (くさかべ よう)1955年大阪府生まれ。小説家・医師。大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院にて外科および麻酔科を研修。その後、大阪府立成人病センターで麻酔科、神戸掖済会病院で一般外科、在外公館で医務官として勤務。同人誌「VIKING」での活動を経て、『廃用身』(2003年)で作家デビュー。vol.844
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