KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年5月号
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代へと意識を移動させると、仮に芝居だとしてもそのときのふたりは幸せなのです。自分がイライラしてはいけない。それは今回僕が学んだことでもあります。藤さんご自身も高校時代のことを思い出しながら演じたのですか?僕は一匹狼で、ひとりでいるのが平気だから、桃次郎とは全然違うんですよ。だから、キャプテンやリーダーの資質って何だろうと考えましたね。みんなの言うことを「わかった、わかった」とよく聞き、調整をして、最後には決断でしょう。ある一つの決断をしなければいけないとき、これが最善だとわかっていても、チームのために次善のものを選択するケースだってある。最善を選択することで悲しむ人を出すのではなく、次善でこのチームが存続できればそれでいいではないか。強引に「いいから、俺について来い!」というのが良いキャプテン像ではありません。芝居だろうと何だろうと、人を鼓舞するアジテーションのスタイルも人によって違いますから。「人生には、遅すぎることなんてひとつもない!」が本作のメッセージでもありますが、これからチャレンジされたいことは?今でも仕事をいただくたびに、こんな大役をできるかなと思うけれど、とにかくやるんだと鼓舞しながら取り組んでいます。「たとえ明日、世界が滅びても 今日、僕はリンゴの木を植える」というマルチン・ルターの言葉がありますが、希望を持つというのは人間の良さです。どこかでダメだろうと思っても、光が差してくると信じさせる。そのトリックを自分自身にかけられるのが、人間の一つの美徳だと思うのです。藤 竜也(ふじ たつや)1941年生まれ、神奈川県出身。『愛のコリーダ』(76)で報知映画賞最優秀主演男優賞を受賞、『村の写真集』(03)で上海国際映画祭最優秀主演男優賞を受賞、『龍三と七人の子分たち』(15)で東スポ映画大賞主演男優賞受賞。ほか『愛の亡霊』(78)、『アカルイミライ』(02)、『台風家族』(19)など100本以上の映画に出演。第一線で活躍し続ける名優。text. 江口由美『それいけ!ゲートボールさくら組』(2023年 日本 108分)藤竜也、石倉三郎、大門正明、森次晃嗣、小倉一郎、田中美里、本田望結、山口果林、毒蝮三太夫、三遊亭円楽監督・脚本・編集:野田孝則 配給:東京テアトル 2023年5月12日(金)よりシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸他全国ロードショー© 2023「それいけ!ゲートボールさくら組」製作委員会キャプテンの資質を考える29

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