KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年5月号
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でも話しちゃったんだけど。当時のプロモーションの一つだよね。meme 他にバイトのご経験は?松 本 高校に入ってから映画のエキストラをしたことがある。細かいことは忘れちゃったけど、キャバレーでのワンシーンで社交ダンスかなんかしてるんだけど、僕はビッグバンドのメンバーでドラムを叩いてる。「ドラムできる人いませんか?」って聞かれて手をあげたことは覚えてるのにタイトルは忘れちゃったな。 最近は70年代の映画に僕かもしれない人を見つけたよ。主人公の後ろでピョコピョコ跳ねてる。おそらく僕(笑)。meme 松本さんを探せ!って映画の見方ができますね。ウォーリーみたいに(笑)。松 本 高校卒業した春休みは六本木の『クローバー』ってケーキ屋さん(現在閉店)でウエイター。運転免許とりにいくだけであとは暇だったからね、ドラム叩いて、コーヒー配って(笑)。お金が欲しかったんじゃなく、色々見たかったんだよね。meme 南佳孝さんのライブに戻りますけれど、今回は50周年のanniversaryになりますね。松 本 出会いは1972年。はっぴいえんどが発展的解散をしようと、メンバーがそれぞれ新人をプロデュースすることになってね。歌の上手い人がいるって友人に紹介してもらったのが南佳孝だった。カセットテープで彼の歌を聴いて、喫茶店で話して、僕の家に移動してまた話して、いろんなことが2人の間ですぐに決まっちゃった。 その頃、書きたい詞があってね、都会っぽい、ニューヨークのおしゃれな男女のラブストーリーみたいな。その思いを詰め込んだのが『摩天楼のヒロイン』。ほかにも準備していたものもあって、全部、彼が歌った。初めからいい曲作ってたし、音楽のセンスもよかった。ずっと変わらず信頼してやってきた大事な人。meme 『Simple Song』も好きな曲です。松 本 友だちの葉山の別荘に行った時、秋が近づくと周りの別荘の人たちが、次々に窓をしめて帰って行くのを見ていてね。波も高くなって夏の終わりを感じる。それが夏に取り残された孤独な男の歌になった。こんなにシンプルな気持ちはないってくらいシンプルな言葉が出てきて、それをシンプルに歌ってほしくて『Simple Song』。 この曲のアレンジは教授(坂本龍一)。『憧れのラジオガール』もそう。すごくいいよね。かっこいい。楽器の使い方がおしゃれ。弦の使い方なんかほんとすごい。楽器をよく知ってるからね。リズムもいいし、突出してると思う。 あまり話したことはないけど、細野さんの仲間で、佳孝のアレンジもやってて、行動範囲は似てるの。同じカフェに通ってたり。すれ違うことはよくあった。西麻布のカフェですれ違った時、教授が安西冬衛の詩集を持っててね。普通あんな厚くて重い本は持ち歩かない。なんか難しい詩人だし、安西を読むのは僕ぐらいだと思ってたから「おっ、よく知ってるな」と思ったことがある。 初めて彼の演奏を聴いたのは、大瀧さんが福生のスタジオで撮ったビデオ。うつむいてピアノを弾いてた。静かにね。細野さんとYMOをやる前の話。いなくなって寂しくなっちゃったね。19

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