KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年5月号
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館公式YouTubeチャンネルで配信するという新たな試みにも挑戦した」。僕はこの時期はほとんどアトリエに籠ったままで、外出することはなかったですね。今、この展覧会の出品作品を眺めていると、どの作品もパニック的な主題のものが圧倒的に多く、我ながら、どうしてこのような戦慄的なパニックを主題にしたのかよくわかりません。つまり、絵を描くこと事態が一種のパニックであるということですかね。1枚の絵を描く時、キャンバスの前に立つ、その時の心境は、確かに緊急事態です。無計画でキャンバスの前に立ちます。さて、これからどうする、どこへ行神戸で始まって 神戸で終る ㊳ジュアルにマスクや口腔のイメージをコラージュする作品〈With Corona〉をウェブ上で展開している。本展ではそれらを展示空間各所に散りばめるようなインスタレーションを合わせて行った。なお、本来この時期にはY字路シリーズの誕生20周年を記念する展覧会『横尾忠則ワーイ!★Y字路』を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の状況に鑑み延期とし、急遽かわりに企画したものである。コロナ禍により、大勢の人が集まるイベント開催が難しかったため、無観客の展示室を舞台とする動画作品『in between 横尾忠則×草刈民代の世界―アートとダンスの競演―』を制作、当第26回・「横尾忠則の緊急事態宣言」展について担当者の山本淳夫さんに、この展覧会の主旨を聞いてみよう。「新型コロナウイルスにより、我々の日常は以前とは一変した。感染症が世界規模で蔓延する様はまるで映画のようにも見え、時に虚構と現実との境界線が曖昧になったような感覚に襲われた。コロナ禍が起こるはるか以前から、横尾は虚実が交錯するかのような緊迫した状況を繰り返し描いてきた。本展では、横尾の絵画における、そうした危機的状況の表現に注目した。また、コロナ禍に反応するかたちで、2020年5月より、横尾は様々なビTadanori Yokoo美術家横尾 忠則撮影:山田 ミユキ14

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