換えます。また弁の接合が悪くなり逆流をきたす場合には可能な限り人工弁は使わず自身の弁を修復する弁形成術を選択します。より高度な技術を要しますが、術後の患者さんの遠隔期の生活の質向上につながります。―外科手術のほかにも選択肢は広がっているのですか。胸骨を縦向きに切開し、人工心肺を使用することで心臓を停止させ、その間に傷んだ血管や逆流防止弁を治療するのが従来の外科手術です。それに対して低侵襲のカテーテル手術は足の付け根あたりから大動脈に細い管を入れ、レントゲンやCT画像を確認しながら行い随分早い回復が得られます。また胸部や腹部大動脈瘤のカテーテル治療ではバネが付いた人工血管であるステントグラフトを丸めてカテーテルの中に押し込み、血管内で広げて血液の通り道を作り動脈瘤壁に圧がかからないようにします。弁膜症の外科手術で多く取り入れられている小切開低侵襲手術「MICS(ミックス)」は肋骨の隙間を切開して内視鏡を併用する手術です。傷が小さく日常生活復帰までの時間を短縮できます。従来と比較し様々な選択枝が増えています。―低侵襲の手術が最良とは限らないのですか。カテーテル手術は傷が小さくて患者さんの負担は軽くてすむ一方、新しい治療法であることが多く遠隔期の成績が不明であり注意を要します。従来の手術では高齢の患者さんには侵襲が大きいこともありますが、通常の手術は確実で出血などの不測の事態にも対応でき、さらに遠隔成績が明らかです。例えば従来の大動脈弁置換術では人工弁の耐久性は15年程度見込めますが、カテーテルで施行する大動脈弁手術ではその耐久性は8年程度といわれています。80歳を超えた高齢の方の場合は弁の耐久性より侵襲の少なさを優先しカテーテル手術が選択されることが多くなるわけですが、我々は内科の先生と相談し治療方針を決定し、最終的には患者さんそれぞれに十分説明しご希望を鑑み決定します。―他科と連携しながら治療方針を決定するのですね。循環器内科と心臓血管外科は週2回カンファレンスを行い、特に高齢の患者さんでは体の脆弱性(フレイル)の度合いや認知機能を含め詳細に検討し、ご自身やご家族の意向を考慮しながら治療方針を決めています。血管内治療を専門とする放射線科との連携も欠かせません。主にこの3科がチームを組んで患者さんにとって最良の治療方針を決定し実際の治療に当たっています。―近隣の病院とも連携しているのですか。 神大病院は緊急を要する場合には画像情報を共有するためにICTを活用して県内の病院と連携し速やかに治療を進めています。心臓血管外科ではいち早く取り入れ、従来は患者さんと検査結果データが同時に搬送されていたのですが、クラウドに保存されたデータを共有して到着前に治療方針をより正確に相談できるようになりました。患者さんが到着した時点ですぐに手術室に搬入し時間を無駄78
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