KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年4月号
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―清野先生が糖尿病を専門にされたのはなぜですか。大学の研究室で糖尿病の研究に携わっていたとき、その頃急激に患者数が増えて社会的に関心が高まっていた糖尿病を専門に医療に携わることを志しました。当時はまだ知識や関心も薄く、兵庫県立尼崎病院塚口分院(現・兵庫県立尼崎医療センター)で看護師さんや管理栄養治療への支障を解消したいという一心から始まった士さんと一緒に手探りで「チーム医療」を始めました。―当時から糖尿病に対する大きな誤解や偏見「スティグマ」があったのでしょうか。糖尿病は1型と2型に分類されますが、特に1型糖尿病は遺伝病と誤解された上、注射器を使い自分でインスリンを打つことから周りから奇異の目を向けられた方もいました。感染症でもないのに他人の目を憚って隠し、中には治療を受けさせてもらえず亡くなるケースもあったほどです。―そのようなスティグマを解消しようという思いはどのようなきっかけで生まれたのでしょうか。糖尿病治療の道を志したときからこれまでに出会った多くの患者さんやそのご家族と話をしているなかで、「治療への支障を少しでも解消したい」という一心でした。治療だけでなく社会全体の意識を変えることが必要だと考え、日本糖尿病協会の活動を広げてきました。社会全体の意識を変えるのが日本におけるアドボカシー活動根拠のない思い込みやことばのイメージにとらわれず、糖尿病のある人とない人が共に暮らせる社会の実現をめざして公益社団法人 日本糖尿病協会理事長 清野 裕1967年京都大学医学部卒業。兵庫県立尼崎病院、米国ワシントン大学客員研究員などを経て、1996年京都大学大学院医学研究科 糖尿病・栄養内科学 教授。2004年関西電力病院 院長、京都大学医学部 名誉教授、公益社団法人日本糖尿病協会 理事長に就任。2016年より現職 関西電力病院 総長。スティグマということばをご存知だろうか。不正確な知識や情報に基づいた負の烙印「スティグマ」を押され、社会的不利益を被っている問題は多くあるが、“糖尿病”もまたそのひとつである。神戸に本社を置き、糖尿病とともに歩む人たちの豊かな生活のために取り組んでいる「日本イーライリリー」。「長年治療に携わり社会的不利益解消に尽力されている清野先生から、今日はどんな有意義なお話をお聞きできるのか楽しみです」と話す糖尿病・成長ホルモン事業本部長メアリー・トーマスさんを交え、日本糖尿病協会理事長の清野裕先生にお話を伺った。記事広告70

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