すね」とにやりと笑みを浮かべた。舞台への挑戦を、「自分の人生を見つめ直すターニングポイントとなるのは間違いないでしょうね」と語り、こう続けた。「この舞台が終わったら、今までの自分とは変わっていると思う…」穏やかな表情だった。だが、あえて高い壁に挑み、俳優としての宿命を貫こうという強固な意志、覚悟が滲み出ていた。「今は、もう俳優の家系を隠そうとは思わない。俳優として生きていくと決めたからには、この宿命を咀嚼し、活力に変えていくしかないと思っています」と迷いを振り切るように語る。舞台初挑戦に対し、父として、俳優の先輩として。佐藤浩市さんから何かアドバイスの言葉はあったのだろうか。「父に知らせると、『えっ、舞台に出るのか?』という言葉だけ。ただ、驚いていましたよ」と笑いながら教えてくれた。俳優として豊富なキャリアを持つ佐藤浩市さんだが、実は舞台の経験はない。「でも、母は舞台女優でしたからね」とすかさず寛一郎さんは口にした。映画俳優としてデビューし、ドラマにも呼ばれ、次に舞台に、それも主演として立つことを決めた。これは、やはり俳優の家系に生まれた三代目としての宿命といえるのでは―。そう向けると、寛一郎さんはうなずきながら、「結果として、そうなっているのは確かで「でも、俳優は、歌舞伎の世界のように跡を継ぐことを運命づけられたわけではありません。幼いころから俳優になりたいと言ったこともなかったんです」だが、18歳になり、将来や仕事について意識し始めたとき、この考えに変化が表れる。「言葉で表すのは難しいのですが、俳優をやるしかないと思った」と言う。そして、「俳優という仕事と向き合うために18年が必要だった」のだとも。あえて名門の「佐藤」という苗字を伏せ、「寛一郎」を名乗って俳優としてデビューしたのは、そんな揺れ動く心情の表れだったのかもしれない。それでも、この「寛一郎」という名には俳優の宿命を託された奥深い意味が込められていることも自覚している。体重1600グラムしかない未熟児として生まれ、両親は「寛大に育ってほしい」という願いを込め「寛」の文字を授けた。イチは父、浩市からの一文字を、ロウは祖父、連太郎からの一文字を…。『カスパー』大阪公演日時:2023年4月9日(日) 14:00開演会場:松下IMPホールチケット料金:9,800円(全席指定税込)一般発売:2023年3月5日(日) 10:00~問合せ: キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00~18:00/日祝休業)公式サイト:https://tspnet.co.jp/kaspar-2023/26
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