KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年4月号
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と家へ帰って台本を読み、あとは早めに寝るだけ。サウナが唯一の楽しみですかね。サウナに入っているときだけ、頭の中に台本以外の余白が生まれるんです」と語る。舞台は約80分。芝居途中のインターミッション(休憩)は無し。その間、主演のカスパーはほぼ出ずっぱりだという。「タケットは身体表現の演出のスペシャリストと呼ばれていますが、今回は少し趣が違う。僕が激しく踊るシーンはあまりないかもしれませんよ。では、どうやって表現するのか? それは、実際に舞台を見て確認してほしい」映画俳優として〝銀幕デビュー〟して約6年。「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(廣木隆一監督)、「菊とギロチン」(瀬々敬久監督)、「一度も撃ってません」(阪本順治監督)などに出演。日本の名匠と呼ばれる監督たちの指導を受けてきた。ドラマ出演も多い。NHK大河をはじめ、TBS系の日曜劇場枠「グランメゾン東京」で亡くなってしまいます。この数奇な運命を生きたカスパーという若者を知る人も、知らない人も、この舞台を見て何かを感じとってほしい。僕はカスパーを人ではなく、カスパーという概念としてとらえています。誰の心の中にも〝カスパーは存在する〟のではないかと…。この思いを何とか舞台で伝えることができたら」と抱負を語る。瞬発力と持続力俳優として初めて挑む舞台の世界。生活にも変化は表れたのだろうか。「舞台の稽古は毎日午前10時半に始まり、午後6時には終わります。これまでは完全に夜型の生活だったので、早寝早起きの規則正しい生活になりましたね。夜になるとすぐに眠たくなりますから」と苦笑する。映画やドラマなどでは撮影が深夜になっても終わらず、未明に及んだり徹夜になることなどざらだから。「夕方、舞台稽古が終わる「最初で最後…」と悲壮な覚悟を口にするのもうなずける。「正直、元々、舞台に興味があったわけではないのですが…」と前置きした上で、「渡された台本を読んでいて、芝居の脚本を読んでいるという感覚ではなく、一冊の本を読んでいるような気持ちになりました。それも掘れば掘るほど興味、面白みが沸いてくるような…」脚本に惹かれ、しだいに舞台への思いは募っていった。19世紀はじめに実在したドイツ人孤児、カスパー・ハウザー(1812~1833年)が主人公。16歳で救出されるまで、カスパーは地下牢で監禁されていたため、言葉を話すことも文字を書くこともできなかった。そんな少年が、突然、広い世界へ投げ出される。言葉を知り、言葉に意味があることを理解し、意志を持ったとき。カスパーはどう変わっていくのか…。「16歳でカスパーは初めて言葉を習い、常識を習得し、わずか4年ほど生きただけで21歳24

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