KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年4月号
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200人ばかりの人全員にマスクを配布して、マスクを装着してもらうという、参加型パフォーマンスを行った。200人全員がマスクを装着して椅子に座っている光景は、異常としか言いようがなかったが、その後、日本中だけでなく世界中がマスク装着の人たちによって日常が一変してしまった。そういう意味でもこの光景は歴史的であったといえよう。芸術は、現実で発生されるものであるが、その創造のインスピレーションはすでに未来で出来上がっているもので、それが芸術家のイマジネーションを通して現実に移送再現されるものである。ここに掲載した写真には神戸で始まって 神戸で終る ㊲作品解説をカルテに模し、受付監視スタッフに白衣を着用させ、来場者には鑑賞チケットに代えて診察券を発行、さらに会場内の各所に病院施設で実際に使用されていたベッドや点滴台、外来案内板や待合椅子などの物品を設置することで、美術館空間を病院にハイジャックしてしまった。この病院展を企画した段階ではコロナは発生していなかったが、オープニング前日に、国際的に懸念される緊急事態が発生したとWHOが発表して、世界が騒然となったのは周知の如く。だからこの段階では、マスクをつけている人は日本中でごくわずか。だけどこの展覧会のオープニングの来客者僕は病院が好きだ、と言うと皆な変な顔をするのは、病院の嫌な人が大半だからだろう。こんな僕の習癖を展覧会のテーマに出さないか、と学芸員の林優さんが考えた。「観念的な思考や言葉より肉体を通して認識を重視する」という僕には病院展がふさわしい。豊富な病歴をもち、自他共に認める“病院好き”の僕に因んで、林さんは、美術館を病院に見立てる演出で「兵庫県立横尾救急病院」展を企画した。美術館を病院に見立てるために、小児科、外科、眼科、皮膚科、耳鼻咽喉科、入院病棟、老年病科、スポーツ外来を設定。Tadanori Yokoo美術家横尾 忠則撮影:山田 ミユキ16

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