KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年3月号
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治療が進歩した今の日本では透析開始の平均年齢は70歳代です。透析開始後は感染症にかかりやすいというリスクはありますが、きちんと機能を補いながら治療をすれば質の高い生活が続けられます。―腎炎は腎不全とは違う病気ですか。腎臓の機能には関係なく腎臓の中で炎症が起きている疾患の総称が腎炎で、突然発症したものは急性腎炎、長期間かけて発症したものは慢性腎炎と呼びます。治療法のある病気もたくさんあり早く発見できれば完治が可能です。これを放置すると、機能回復が難しい腎不全の状態となってしまいます。―大学病院では、生まれつき腎臓機能がうまく働かないというような難しい症例も多いのですか。遺伝子異常、またはその他の理由で生まれつき腎臓に奇形や異常があり十分に機能を果たさない場合は小児科で治療されています。腎臓内科では年齢を重ねるにつれて分かってくる遺伝的な疾患を主に扱っています。―どんな病気があるのですか。例えば、腎臓の中に袋のようなものがたくさんできる「多発性嚢胞腎」は袋が大きくなり、腎臓が大きくなるにつれて腎臓の機能が落ちてきます。最終的に腎不全に陥り透析治療に入ります。腎臓が異常に大きくなって患者さんの生活に支障がある場合は動脈からの血流を人工的な塞栓により止めて、腎臓のサイズを小さくさせるケースもあります。また、別の疾患として、特定の酵素が作られず不要な物質が体内のいろいろな場所にたまる「ファブリー病」という病気があります。不要な物質が、腎臓にたまると腎不全になります。こういった特殊なケースも大学病院ですので積極的に受け入れています。―神大病院は腎移植も行われていますね。コロナの影響で今は少し減っていますが、国立大学の中でも移植手術では高い実績を持っています。倫理観や法律の問題があり、ほとんどが家族などから提供される生体腎移植でありますが、脳死の方から提供いただく献腎移植も合わせて神大病院では年間30~40件の腎移植手術が行われています。―機能しなくなった腎臓を入れ替えるのですか。残すことによって問題がある場合は取り出して入れ替える場合もありますが、ある程度の機能が残っている場合や摘出による合併症のリスク軽減のために別の場所に入れるのが一般的です。足の付け根の上の下腹部辺りに入れ、大動脈から足に向けて血管が分れる位置で腎臓と血管をつなぎます。手術をするのは泌尿器科の先生ですが、術前術後の評価や管理は腎臓内科と連携してカンファレンスを行い、コミュニケーションを取りながら患者さんの回復を目指します。チーム医療は神大病院のいいところだと思います。98

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