KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年3月号
39/136

prologueコンを巻き込んだベーコン・エピも普通だけどね。大下 新しい日本のフランスパンを生み出した人ですね。西川 そして流行らせてそれが今では定番になってる。そこもすごいところ。 ソフトなフランスパンの話に戻るけど、フランスの柔らかめのパンといえばパン・ブリエ。「漁師さんが航海中に硬いバゲットばかり食べてるのはかわいそう」って、ブルターニュのパン屋さんが漁師さんのために作ったの。優しさから生まれたパンなの。文 そういう進化っていいね。ビゴさんの話も進化だよね。大下 進化してます?西川 考えてることはあるよ。最近まわりの人に聞いたんだけど、パンは朝と昼は食べるけど、夜はほとんど食べないって言うの。「普段はそんなおしゃれな食卓じゃない」って。いまだにそうなのかって、それはさみしいなって思ってね。文 「おしゃれ」はいい言葉だけど、もっと身近にあってほしいね。うちでは子どもが小さい頃は今よりもパパのパンを食べてたね。パン・デピス(フランスで食される香辛料のたっぷり入ったパン)とか、タルティーヌ風にお肉や野菜なんかを色々のせたりして。大下 それおしゃれです!西川 楽しいと思うんだよ。例えば、たまにはカレーにパンを合わせてもいいじゃない。パンツァネッラ(硬くなったパンを再利用したトスカーナのサラダ)もいいし、パン・デ・アホ(スペインのにんにくスープ)はパンを具材にしたスープ。これもいいでしょ。北欧のスモーブローもいいね。晩御飯にパンが登場する提案をもっとしなくちゃいけないんだよね、僕たちパン屋が。“新しいものを提案したい”とは常に思っていて、今は、志をもってがんばっている若いパン屋の助けになりたい。来る日も来る日も朝から晩まで小さいパンを何個何個も作って利益を上げるって難しいこと。身体に良いものだけを使って焼いている僕たちのパンは「安心」「安全」しかも「おいしい」からね、夜も食べて欲しい。大下 豊かな食の提案にもなりますね。西川 そう。豊かでありたいよね。今って皆、忙しなく焦って生きてる気がする。カリフォルニアに行った時、車が人に合わせてゆっくり走ってるように感じたんだ。僕らは逆でしょ、人が車を待つ。そうじゃなくて、人の歩調に合わせたらいいのにね。そして高い安いだけじゃない、本当においしい食べ物の話をしたいね。サ・マーシュにてビアンヴニュのデニッシュはクリームたっぷりで季節の果物が楽しめる。『ベーコンエピ』には西川シェフと共通の思い出が…サ・マーシュの棚には焼き立てが次々に並ぶ。フランスパンにチーズをたっぷり入れた『パンフロマージュ』はお話に登場した一品39

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る