かけた。一人ずつ順番にとっておきの〝トリネタ〟を披露していったが、その3人の中でのトリを任され、人情噺「浜野矩随(はまの・のりゆき)」を演じた。彫師の名人として名高い矩康を父に持つ矩随。父亡き後、彫師の道を受け継いだものの、父とは比べ物にならない腕前だったが、糊口をしのぐために、父に心酔していた目利きの道具屋に自分の作品を安値で買い取ってもらっていた。「いつか化ける」。そう期待してくれた道具屋にも愛想を尽かされ、矩随は死のうと考える。だが、息子を案じるが故の母の苦悩と死の覚悟を知らされ、彫師としての魂が覚醒。不眠不況で渾身の観音像を彫り上げるが…。 この日の三人噺の1カ月前。2021年3月3日、母、浜田和子さんが75歳で亡くなった。2020年11月頃から「浜野矩随」アートのような噺家です。気心の知れた3人なんです」次世代の落語界を担う個性豊かな3人だが、その共通点を聞くと、「落語とは何か? 常にそれを研究しながら落語の魅力を追究しているところ。1回目から1年経ちますが、それぞれが、この1年で研鑽してきたネタをお見せしますよ」と意気込む。落語の「陽」と「陰」昨年、第一回の会場として使われたシアター・ドラマシティはふだんはミュージカルや舞台などを開催するホールだ。ここに約900人の観客が詰め大阪・毎日放送のプロデューサーから白羽の矢をたてられ、この企画が持ち上がったという。「それぞれが約45分間の持ち時間で、トリネタを披露します。今回のネタですか? まだ決めていません。そのとき、その状況において、最もふさわしいネタをお披露目したいですからね」3人とも、まだ披露するネタを明かしていないという。「吉弥さんと私は平成6年に入門した同期組。一之輔さんとは東京・渋谷の『渋谷らくご』という落語会で長年一緒に共演してきた仲。歴史的建造物の美術館に置かれた現代22
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