KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年3月号
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「まぁぎょーさん描いて死にはったんやなぁ」と思って見ていただいて結構です。まぁ、生存中の遺作展みたいなものです。作品と言うのは作家が描いている時間だけが生きているもので、完成と同時に作家の肉体から離脱してあの世にいくものです。作品というのは、ある意味で作家の死産児みたいなものだと思っています。よく、「作品を生む」という言い方をしますが、僕は一種の堕胎児だと思っています。特に僕の作品は未熟のまま堕胎されたものです。僕の作品の背景というか背後には常に死がつきまとっています。それは作品自身の死の記録だからです。だけど作品は不思議なもので、作家から離れると生き始めるともいいます。そういうとそうですね。つまりこうい神戸で始まって 神戸で終る ㊱頃は無事に育たないのではないかと医師は言っていたそうです。僕の養父母は、69才、74才で死去しているので、僕の86才は驚異であると我ながら驚いています。昨年7月に、突然、急性心筋梗塞に襲われた時は一巻の終わりかなと思ったが、なんとか死にそこなって生還してきました。だから本展は、僕にとっては死にそこない記念展ということです。「満満腹腹満腹」展は観賞者の気分を唄った展覧会名だけれど、僕の側からすれば、やっぱり「死にそこない」展ということになるのかと思います。作品というのは生きていた時の執念の記録みたいなもので、本展はそういう意味で、作品の幽霊展みたいなものであります。そう思ってみると、また別の見え方がすると思います。開館10周年記念として「満満腹腹満腹」展が横尾忠則現代美術館で目下開催中(5月7日まで)。2021年の開館以来、様々な角度から僕の作品を編集しながら、30本の展覧会を開催してきました。10年前の開館記念展「反反腹腹反復」展のタイトルのセルフパロディーでもある本展に過去30本の展覧会を限界まで詰め込んだ、正に満腹展であります。キュレイターは山本淳夫さん。10年前の開館時には、まさか10年後まで寿命があるとは思っていなかっただけに、われながら、よく体がもっているなぁというのが正直な驚きです。現在86才で、本展が終了する1ヵ月後には87才を迎える。もともと子どもの頃から虚弱体質で、幼児のTadanori Yokoo美術家横尾 忠則撮影:山田 ミユキ14

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