KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年2月号
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患者が、最後の手段のこの治療を施される。二か月後、がんが消えて、「感謝ですよ。ホッとしてますよ。もうがんも恐くないんだなって…」と自転車に乗って病院を後にする様子が。しかし、小林博士はその言葉を直接聞くことはない。番組の中で博士が語られていた言葉のいくつかを記す。《「ここで天からアイデアが降ってきたとか言うたらカッコいいんですけど、そうはならない。理詰めで一歩一歩進んでいくしかないし」「人がいて、患者がいて、そこに貢献できるようになったら〝医学〟ですよね。医学研究者と自分を呼ぶ以上、譲れんとこではある」》 そして、わたしもよく訪れる夙川公園を散歩しながらの言葉。《「最初はね、それこそネズミの治療でしょ?って言われてましたからね。そうですけどね、そりゃあネズミ治してるだけですけどって言ってました。けども今は人間が治るようになってきましたからね」》胸の内の想いがあふれ出るような言葉だ。しかし今のところはまだ一部の患者にしか適応されていない。一日も早く一般の多くの患者に施されるようになってもらいたいものである。実はわたし最近、がんの診断を受け、治療法とスケジュールもほぼ決まった。が、気がかりなところが少しあり、久隆さんと電話で話した機会にお尋ねしてみた。その内容は書かないが、疑問が解消し、わたしは心が軽くなった。念のために申しておきますが、わたしのがんは早期なので、現在のところ、幸か不幸かこの光免疫療法は受けられません。 (実寸タテ20㎝ × ヨコ8.5㎝)■今村欣史(いまむら・きんじ)一九四三年兵庫県生まれ。兵庫県現代詩協会会員。「半どんの会」会員。西宮芸術文化協会会員。著書に『触媒のうた』―宮崎修二朗翁の文学史秘話―(神戸新聞総合出版センター)、『コーヒーカップの耳』(編集工房ノア)、『完本 コーヒーカップの耳』(朝日新聞出版)ほか。■六車明峰(むぐるま・めいほう)一九五五年香川県生まれ。名筆研究会・編集人。「半どんの会」会計。こうべ芸文会員。神戸新聞明石文化教室講師。93

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