KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年2月号
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らい大丈夫と口にするような、とことんNGのセクハラ発言を入れていました。一方、そんな赤羽が一人で佇むシーンを作ったのも松井さんのこだわりで、自宅で静かにハーブティーを飲むシーンも書いています。全体的には、メインターゲットへ訴求できるようにエンターテインメントに徹すること、必要以上にセリフを入れないことに注力しました。赤羽は間違っていると思ったら、周りから学んで取り入れる柔軟性があります。渡辺いっけいさんとは、赤羽にとって亡き妻の存在が大きいのではないかと話をしました。軌道修正をするだけの聞く耳を持てていたのは、妻との関係性が良好だった証です。赤羽はすごい熱量の持ち主ですから、彼の成長物語ではあるけれど、その熱量が周りの人たちの意見を聞いたりする方向に転じただけとも言えます。セクハラ男から脱し、最後にはある種の可愛らしさも感じられるのではないでしょうか。結衣を演じた松本若菜さんの魅力とは?松本さんは、ちょっとした仕草や、何も喋らない時の表情で物語るのがすごく上手な方です。また、現場でこちらの演出に対し、ご自身が考えてきた演技からスッと方向転換をしてくださり、とてもスマートなお芝居をされる印象がありますね。役者魂を感じる方です。結衣の母、十和子(宮崎美子)がさりげなく繰り出す「十和子マジック」は、マッチングアプリでは不可能なベテラン仲人の勘所を感じました。心理学を学ばれ、洞察力に優れた仲人を取材したとき、お見合いとその後の反省会を繰り返しているうちに、本人は無自覚だけど、条件には合わないお相手の話ばかりしていることに気づき、指摘したケースを話してくれました。会員が、結婚相手に対して本当に何を求めているのかをカウンセリングするのが仲人ですが、「なぜ条件と違う人を勧めるのか?」と周りが聞いてもその仲人の方は「見ていたらピンとくることがあるのよ!」とおっしゃる。一方、お見合いがうまくいかず、会員自身が自分を見つめ直す中で、本当に自分にとって良い結婚相手に気づけるタイミングもあるそうです。そこでさりげなく、相性が合いそうなお相手のプロフィールを差し出すのだそうで、聞けば聞くほど、まるでマジックのようだと思った。それが「十和子マジック」に繋がりました。仲人母娘を演じた松本若菜と宮崎美子28

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