KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年2月号
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光栄です。長年、和太鼓演奏を続けてきましたが、それが認められ、うれしい。とても励みになります。まだまだ頑張らないといけませんね」70歳を超えても、新たな役作りや、英哲風雲の会を率いて2時間以上の演奏をこなす体力、技術、精神力は衰えを知らない。「あと何年、演奏できるでしょうか。ただ、体力が続く限り叩き続けたい…」体力を維持するために、鍛え抜かれた筋肉は服の上からでも分かる。演奏家としての人生は半世紀を過ぎたが、まだ夢の途上にいる。したが、これは、どの国、民族、宗教に関係なく同じ。国境など関係ない。実は叩いている私自身、全身に力がみなぎってくるのが分かる。だから、衰えを感じることがないんですかね」と笑った。昨年、アジア文化の保存と創造に貢献した人や団体を顕彰する「福岡アジア文化賞」の大賞に選ばれた。1990年から続く伝統ある賞だが、日本人の大賞受賞は2013年の医師、中村哲さん以来約10年ぶりの快挙だった。「世界貢献し、アフガニスタンで亡くなった中村さんと同じ賞を受賞できるなんてとても高校の同級生だった上田さん、木村さんの二人は、顧問の先生に誘われ、経験したことのない太鼓部に入部。その直後、震災を体験した。太鼓部では、各地に出向いて、慰問演奏会をひらいた。そのとき、被災者を勇気づける和太鼓の力に改めて感動したという。二人は高校卒業後、神戸を中心としたプロの太鼓グループの結成に参加、太鼓奏者の道を選んだ。その数年後、上田さんは林さんの門を叩き上京、弟子入り志願した〝一番弟子〟だ。心を鼓舞する不変の音欧米の豪華なホールに集まったタキシードやドレスで着飾った観客の前での厳かなコンサートがあれば、アフリカ大陸の屋外での公演や、被災地の炊き出しの横で、被災者の前で和太鼓を叩くこともある。だが、林さんにとって演奏する場は関係ない。「和太鼓の音には聞く人たちの心を鼓舞する力がある。世界中を回って演奏してきま林英哲 スペシャルコンサート2023『春鼓人宝~しゅんこ・ひとだから~』日時:2023/2/25(土) 15:00会場:東大阪市文化創造館 Dream House 大ホール料金: ¥6,500  ¥5,500(税込)※未就学児童は入場不可問合せ:キョードーインフォメーション    0570-200-888(11:00~16:00 日祝休み)林 英哲(はやし えいてつ)広島県生まれ。11年間のグループ活動後、82年太鼓独奏者として活動を開始。84年初の和太鼓ソリストとしてカーネギー・ホールにデビュー。現代音楽の分野でも前例のない和太鼓ソリストとして国際的に高い評価を得た。00年にはドイツ・ワルトビューネでベルリン・フィルと共演、2万人を超える聴衆を圧倒させた。太鼓独奏者としてロック、ジャズ、現代音楽、民族音楽などの演奏家と共演しながら、かつての日本の伝統にはなかったテクニックと体力を要する大太鼓のソロ奏法の創造、多種多様な太鼓群を用いた独自奏法の創作などジャンルを超越した、まったくオリジナルな太鼓表現を築きあげていく。97年芸術選奨文部大臣賞を受賞、01年日本伝統文化振興賞を受賞。17年第8回松尾芸能賞の大賞を演奏家では初めて受賞。04年より洗足学園音楽大学の客員教授に就任(15年3月退任)。05年より東京藝術大学で年一回特別講座『劇場芸術論』を実施、15年4月より東京藝術大学客員教授に就任。09年より筑波大学大学院でも年一回特別講座開講。Photo.山内城司25

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