KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年2月号
24/124

を並べ、仮設舞台で演じた演奏会だ。「ジブリアニメの作曲などで知られる久石譲さんが、『被災地に一緒に行ってなにかしたい』と言っていたので彼を誘い、慰問の演奏会を開くことにしたんです。久石さんはシンセサイザーを持って、私は和太鼓を持って駆け付けました」被災者たちの多くは、「いったい何が始まるのか?」と驚きの目で眺めていたという。まだ、冬が明けない公園に漂う冷たい風を、和太鼓の大きな音とすさまじい振動が切り裂いた。林さんが力強く叩き続ける和太鼓から放たれた音が、傷ついた被災者たちの心を鼓舞した。「もう一度、立ち上がれ…」と。翌年も林さんは慰問の演奏会のために神戸を訪れている。その時に出会った若者がいた。25日のコンサートでは「英哲風雲の会」から5人が出演するが、その中の二人、上田秀一郎さんと木村優一さんは神戸出身で、創設当時のメンバーだ。世界各国の大ホールで、その国を代表する有名オーケストラなどと共演してきた林さんだが、今も忘れられない演奏会がある。1995年3月。阪神・淡路大震災から約2か月後に、神戸市長田区の公園で和太鼓の中で、日本から持ってきた和太鼓の音を響かせている私たちの姿を見て、『私たちも立ち上がりたい』と声を上げたのです。和太鼓の音から、勇気をもらった、と言いながら…」これまで世界48カ国・地域で和太鼓を演奏してきた。24

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る