KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年1月号
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で、そのノウハウを生かしながら県でもやっていきたいなと。こんどは1つの市だけでなく県下全域を見ていかなければいけないので大変は大変ですけれど、逆にやりがいがあると思っています。有事を考えた地域医療を─地域医療についてはどのような方向性をお考えですか。八田 県医師会は地域医療構想のとりまとめにも大きく関わっています。当初は公立・公的病院を再編・統合しダウンサイジングする方向性だったのですけれど、この3年間、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、再編・統合に向けて再検証が必要とされていた公立・公的病院が新型コロナウイルス感染症の患者さんを受け入れてくれた訳ですので、縮小を考え直さないといけないですよね。兵庫県は地域性が多様で都市部と山間部では状況が違いますので、神戸で感染が流行しているからといって同じような対応を山間部で行っても大丈夫なのかということがあります。今回のコロナ対応を踏まえて、次に策定する地域医療構想の第8次保険医療計画には新興感染症対策を加えたんですよ。─どのような対策ですか。八田 平時と有事では医療提供体制が違いますし、それを切り替える仕組みが必要となります。簡単に言えば、まず、その時の症状に応じた感染症患者の受入機関の選定ですね。それから、感染症対応と、それ以外の医療の地域における役割分担が必要だと思います。地域における受け入れ体制をしっかりとしておくことが大切なのです。─そのためには何が必要なのでしょう。八田 医療専門職の人材の確保は大事ですね。第6波、第7波の頃から子どもの感染も広がりましたから、例えば医療従事者のお母さんが子どもから感染する、あるいは濃厚接触者になり、結果的に人的資源が不足し医療が逼迫しました。公立・公的病院の最適な配置も重要ですし、医療従事者の働き方改革も進めていかないといけません。また、医師の偏在対策も大事です。このようなことについて、我々兵庫県医師会が要となり、県行政と連携して取り組みつつ、郡市医師会と日本医師会との間を取り持っていきたいと思います。コロナへの対応は柔軟に─新型コロナウイルス感染症についての課題は。八田 感染の波を重ねるごとに感染者数のピークが高くなってきています。前回の波と同じ規模を想定した対策ですと後手に回ることが多く、コロナの対応に医療資源を費やしたことで、救急や一般医療、検診や予防接種などが犠牲になっていました。コロナ患者を受け入れないかかりつけ医もおられました。このようなことで、日本が世界に誇る国民皆保険制度のフリーアクセスが損なわれたというの98

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