燃えさかる炎と般若心経に包まれて煙となり、不動明王に見守られながら天へと昇っていく。護摩を焚く修験道と言えば役行者が始祖のように思われるが、実はそれ以前から受け継がれてきたもの。ここでの作法は真言や天台の密教でおこなわれものとはとは少し違い、むしろそれ以前の古式にのっとっているようだ。山伏姿の宮司は独自の所作で願をかける。襖一枚を隔てて「かしこみかしこみ」と「色即是空空即是色」、二礼二拍手一礼と焼香合掌。このような神仏習合は日本の宗教の原風景ともいえるが、明治政府の廃仏毀釈政策で神仏の分断を余儀なくされた。九鬼隆治はその状況に危機感を覚えたのであろう。古来の「祈り」を守るため高御位神宮を創建した。その時代が昭和初期だったために神仏分離令の強制を受けず、古き佳き時代の神仏習合の祈りを守ることができたという訳だ。ちなみに、宗教法人としては神道と修験の2つの登録になっている。ご祭神は、まさに神仏のオールスターだ。主祭神は天之御中主大神(あめのみなかぬしのおおがみ)。最初にこの世に現れた神様だ。その両サイドに素蓋鳴神(すさのおのかみ)や大国主神(おおくにぬしのかみ)など八柱の鬼門八神、そして伊弉諾と仏は表裏一体神92
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