KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年1月号
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ます増えたなと思います。ある種の無常観みたいなものが自分の中にインストールされてしまったような。なので、この映画は無事に公開されましたけれど、それは幸運だったにすぎないな、と実感としては思っています。最後に、この映画を観る人たちへのメッセージを。作り手が唯一コントロールできないのが、観てくれた人たちの感情です。だからこそ、公開が不安でもあり、また楽しみでもあります。僕は“嘘のないメッセージ”を込めたつもりです。どんなことを経験しても、その後も人は生きていくことができる。今、辛いことがあっても、来年の今頃は笑っているかもしれない。苦しみや困難の先には希望がちゃんとあるし、過去の自分に「だから大丈夫だよ」と伝える未来の自分がきっといる。そんなことを伝えたくてこの作品を作りました。どうか、すずめの旅を一緒に楽しんでください。映画館を出る時に「楽しかった」と思ってもらえたら嬉しいです。『すずめの戸締まり』原作・脚本・監督:新海誠  声の出演:原菜乃華 松村北斗 深津絵里     染谷将太 伊藤沙莉 花瀬琴音 花澤香菜     神木隆之介 松本白鸚 キャラクターデザイン:田中将賀作画監督:土屋堅一美術監督:丹治匠音楽:RADWIMPS 陣内一真公開日:2022年11月11日(金) 全国東宝系にて公開中©2022「すずめの戸締まり」製作委員会原作・脚本・監督新海 誠 SHINKAI MAKOTO1973年生まれ、長野県出身。2002年、個人で制作した短編作品「ほしのこえ」で商業デビュー。以降、発表される作品は高く評価され、2004年公開の初の長編映画『雲のむこう、約束の場所』で第59回毎日映画コンクール「アニメーション映画賞」を、2007年公開の『秒速5センチメートル』でアジアパシフィック映画賞「最優秀アニメ賞」を、2011年に公開された『星を追う子ども』で第8回中国国際動漫節「金猴賞」優秀賞を受賞し、2013年公開の『言の葉の庭』では、ドイツのシュトゥットガルト国際アニメーション映画祭にて長編アニメーション部門のグランプリに輝いた。2016年公開の『君の名は。』は歴史的な大ヒットとなり、第40回日本アカデミー賞でアニメーション作品では初となる「優秀監督賞」、「最優秀脚本賞」を受賞。海外においても第42回ロサンゼルス映画批評家協会賞「アニメ映画賞」に輝くなど、国内外で数々の映画賞を受賞した。2019年公開の『天気の子』は、第92回米国アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表に選出され、さらにインドでは本作の劇場公開を希望する5万人以上の署名が集まり、その声に応える形で、日本のオリジナルアニメーション映画としては初となるインドでの劇場一般公開が実現した。39

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