KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年1月号
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手を伸ばして人差し指の第一関節、爪の大きさよりもはみ出るくらいになると、ヒツジの群れみたいに見える「ひつじ雲」に呼び名が変わります。1月の空はシャッシャッとハケで掃いたような薄い雲がよく出ます。8千メートルくらいの高いところにできる「巻雲(けんうん)」です。「すじ雲」ともいい、鳥の羽のようにも見えます。冬の薄い雲は氷の粒でできていて、太陽の前にかかると、虹色に見えることがあります。「彩雲」といい、昔から縁起がいいといわれています。雲を眺めていて動物などに見えると写真を撮るようにしているんです。この雲はこの瞬間だけで、一生出会えませんから。美術館に絵を見に行くのもいいけど、空はタダで見せてくれます。ふと足を止めて空を見上げると、今日しかない一日で何かできることないかなとか、家族でいる時間を大切にしようとか、空に気づかされます。僕は、雨が降ると、大体1時間に何ミリぐらいの強さなのかなとか、実際にその体感が合っているのかなど調べるので、強い雨が降ると「これ、何ミリぐらいの雨やな」って楽しんでいます。ずっと天気のことを考えているみたいですね。そうですね。例えば、晴れの日が続いていて「明日も今日と同じく晴れるでしょう」って言うより、もう少し心に響く表現はないかって、ずっと探しています。同じ晴れの天気でも、誰かの特別な記念日だったりイベントの日だったりします。その天気をしっかりと心をこめて伝える、その気持ちを忘れてはいけないと思っています。お天気マークも大切ですが、お天気キャスターの話す予報にも耳を傾けてもらえたら嬉しいです。2011年から天気キャスターを始め、13年目になります。今まで24時間天気のことを考えてきました。寝ていても「竜巻に会った夢」とか見るんですよ。竜巻に会ったことはないけど、本で読んで知っている仕組み「竜巻の中に入ったら気圧が低いから耳がキーンとなる」みたいな感覚を夢で体験するんです。お天気キャスターは「10年で一人前」といわれています。とにかく最初の10年、がむしゃらに勉強して、いろんなことを知って、常にアンテナ張ってきました。最初の10年間、そのことだけを考えている時期って、僕は必要だったと思います。2022年8月にコロナに感染して初めて10日間休みました。休んでも代わりに誰かがやってくれる。もっと言えば、窓の外では、勝手に晴れるし雨も降る。天気は予報をしなくても変化するんですよ。世の中から隔離されて、いなくなった感覚に襲われて、すごく凹みました。色々考えながら空を見ていたら、晴れたり雨が降ったりしている。「思い詰めて頑張らなくてももっとシンプルに空の変化を伝えられないか」って、諸行無常を感じたんです。「自分に与えられた役割をしっかりとやればいい」って。手は抜かないけど、肩の力は抜いて。もう10年間やってきたんだし、そんなに焦らなくてもいいんじゃないかって。コロナ明けに34

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