当時の撮影メンバー十数人が集まってくれたんです」コトー役の吉岡さんに看護師でコトーの妻となった彩佳役の柴咲コウさん、彩佳の父役の小林薫さん、診療所でコトーを手伝う市職員、和田役の筧利夫さん…。「映画に出演してもらえないですか…と一人ずつ会いに行って一人ずつ承諾を得ました」これまで数多くの映画やドラマを取材してきたが、監督自らが出演依頼のために、これだけ多くのキャストに直接、会いに行って、一人ずつ説得したという話はあまり聞いたことがない。「そりゃあもちろん出ます」。ベテラン俳優、小林薫さんのこの答えを聞くだけでこのシリーズに懸けてきた俳優たちの並々ならぬ熱意が、16年経っても少しも失われていなかったことが分かる。「わざわざ来なくていいのに。決まったら、やるからさ…」。中江監督は小林さんら俳優たちのこんな温かい言葉を聞く中で、「演じる側の人ただ。以来、一貫してドラマ制作に携わり、「東京ラブストーリー」(1991年)で演出補のチーフ(チーフ助監督)を務め、「愛という名のもとに」(1992年)で念願の演出家(監督)デビューを果たした。冒頭で紹介した中江監督の言葉。「もっと〝数字〟を取っているものもある」は、1993年に放送された大ヒットドラマ「ひとつ屋根の下」のことだ。第11話で記録した視聴率37・8%は、フジテレビ連続ドラマ史上最高視聴率を叩き出し、未だにこの記録は破られていない。一貫して制作部でドラマを作ってきた。その過程で、「吉岡さんと初めて一緒に仕事をしたのが、『北の国から,89帰郷』でした」と言うから、そのつきあいは30年以上に及ぶ。人気ドラマ「北の国から」シリーズは2002年に終了。そして翌年、吉岡さん主演で始まった新ドラマが「Dr.コトー診療所」だった。映画化を決意した中江監督は当時のキャスト、スタッフの再集結のために動き出す。映画版に託す魂盟友の吉岡さんは「最初に脚本を読んだときは、本当に切なくて涙があふれた」と明かす。「吉岡さん始め、16年前のキャスト17人が次々と出演を快諾してくれた。スタッフも撮影カメラマンに照明、美術など28
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