KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年1月号
26/148

ていた〝コトーの世界観〟に再び没入してゆくことができるだろう。「当時はヘリコプターによる空撮でしか撮影する方法はなく、大掛かりで大変でしたが、今回はドローンを使っての撮影でした。CG(コンピューターグラフィックス)技術なども、あの頃から格段に進化し、撮影方法も変わりましたね」16年の時の流れは、映像作りの方法を変えたが、「島もこのシリーズの主人公のひとり」と語るように、〝変えてはいけないもの〟にもとことんこだわったという。「撮影では久しぶりに(架空の志木那島のモデル)与那国島に行き、ロケを約3週間敢行しました。現在、島にはスタッフ全員が泊まることのできるホテルはありません。キャストもスタッフも島の民宿などで合宿のように分宿しながらの撮影でした。技術の進化で、セットでの撮影やブルーバックのCG合成などで撮れたとしても、ロケだからこそ映し出せるものがある。だから本当は3週間でもスクリーンサイズでの試み映画の舞台ももちろん志木那島。沖縄本島から船で6時間かかる孤島に建つ唯一の診療所で、コトー(吉岡)は19年の間、たった一人の医師として、島民すべての命を背負ってきた。看護師の彩佳(柴咲コウ)とは数年前に結婚し、彩佳は妊娠7カ月。コトーは父親になろうとしていた…。2003年のドラマ第一話は、大海原に浮かぶ小型船を上空からとらえたシーンから始まった。そして今回。映画が始まった瞬間、往年のドラマファンは心躍らせるに違いない。真っ青な海に浮かぶ客船を上空から俯瞰したシーンが鮮やかにスクリーンに映し出される。船の大きさこそ違うが、あの19年前の冒頭の場面を彷彿とさせるのだ。中江監督が「大スクリーンがふさわしい」と、ドラマではなく映画で撮る覚悟を固めたその理由を、この壮大な場面を見た瞬間、誰もが理解するだろう。そして16年前に一度止まっが、一方で「今回、映画を撮り終え、撮影方法もお芝居の考え方にも、監督として大きな影響を受けていた」。そう素直に認めることができたと語る。俳優、吉岡秀隆さん演じる外科医、五島健助が、東京の大学病院から、南の孤島、志木那島の診療所に着任。〝コトー先生〟として、島民に親しまれながら、地域医療に奮闘する物語は、多くのドラマファンを魅了してきた。惜しまれながら、ドラマ版最終話が放送されたのは2006年12月。今回、16年ぶりに映画版を撮ろうと決めた、その理由とは?「実は、これまでにも数年に一回は続編のドラマ化の話が出ていたんです。でも、正直、映画化はあまり考えていなかったですね」と打ち明け、こう続けた。「でも、あの青い海や島の大自然。この美しい風景を伝えるためにはテレビ画面で見るドラマのサイズよりも、劇場の大スクリーンこそ、ふさわしいのではないか…。そんな思いもしだいに強まってきて…」26

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る