前代未聞の狂言が生まれたというわけである。そんなタブー視した狂言をキュレイターの平林は、第1章の「絵画群と響き合うように配置して、時代やジャンルを超えた様々な出会いが新たな謎やおかしみを創出する展示空間」を展開したという。終りになってしまったが、「人食いザメと金髪美女」という展覧会名のフレーズは、僕の出品作の一点をポスターに使用したことから、このような展覧会の題名がつけられたのではないかと思う。もし人食いザメが人を狙うとすれば、美人がターゲットになるのではないか?という実に無責任なビジョンを発想したもので、大義はありません。世界である。だから僕は、新しく衣装や小道具をデザインしたり、舞台美術を作ったことなどは全て、能や狂言のタブーを犯したことになったわけだが、何でも新しいものを作るという梅原さんの発想を、また茂山千之丞さんが全面的に受け入れ、あのような「人食いザメと金髪美女―笑う横尾忠則展」会場風景美術家 横尾 忠則1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞受賞。令和2年度 東京都名誉都民顕彰ほか受賞・受章多数。2022年3月に小説「原郷の森」(文藝春秋社)が刊行された。横尾忠則現代美術館21
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