KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年1月号
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■Sion神戸市中央区元町通5-2-18【電】078-335-6248 【休】月曜 連載コラム 「球きゅうゆうさいかい友再会」   文・写真/岡力<コラムニスト> あの日あの頃、いつの時代も白球のそばにはドラマがある。このコーナーでは京阪神の野球にまつわる様々なエピソードをご紹介します。Vol.5 旧オリエンタルホテルの味を再現した一枝淳治さん中央区元町通にある一軒のお店。旧オリエンタルホテルに勤務していたシェフより5年の歳月を経て継承した欧風カレーを求め多くの常連客が足繁く通う。「何をするにも父親の名前が先に出てきて面白くなかったです。それをなくすために何をするべきか考えました」。カウンター越しでそう笑うのは『Sion』オーナーシェフの一枝淳治さん。西宮市育ち、かつて阪神タイガースで活躍し、引退後は名参謀と称された一枝修平氏を父親に持つ。自身も小学生から野球を始め強豪・上宮高校へ進学するも同世代だった桑田、清原(PL学園)の活躍を目の当たりにした。その後、明治学院大学に進学し野球を続けるも怪我になき選手の道を断念。卒業後は不動産業、自動車販売業を経て親族が経営する「ホテル一栄」で経験を積んだ。30歳半ばで「神戸花鳥園」にあった和食バイキングをプロデュース。障害者や高齢者に寄り添った様々な実績が評価され国民宿舎の経営者に就任した。 「50歳を前に人生を模索していたところ職場の厨房でシェフからカレー好きか?」と聞かれた。「はい」と返事してから3日後に完成したカレーを口にすると幼少期に両親とホテルで食べた記憶が一気に蘇った。2013年には専門店を開業し昨年からは若い世代へ響くようにハンバーグのトッピングも始めた。店内に飾ってある縦縞のユニホーム。努力家でチャンスを逃がさなかった父親の精神は球場から厨房に舞台を移し受け継がれている。料理の世界で戦う一枝淳治さんマイルドな味わいは女性客にも大人気父親の着用した背番号「88」のユニホーム(阪神タイガース85年優勝時)108

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