KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2023年1月号
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昨秋、源頼朝の手植えと伝わる杉の木を使用した座像が完成し話題を呼んでいる。お披露目の席で挨拶をしたのは各地の名木を調査、研究する『銘木総研株式会社』代表取締役・前井宏之さん。「この仕事に競合はいません」とほほ笑む同氏は垂水区の神陵台で幼少期を過ごす。当時、出来て間もないニュータウンだったが自然も多く、崖の上から西区の景色を眺めていたという。自由な校風に憧れ入学した長田高校ではサッカー部と生徒会に所属。「目立ちたがり屋で当時の校長にも意見しましたね。文化祭、体育祭終わりに三宮の街へ打ち上げに行って楽しかった」と青春時代を振り返る。卒業後は、大阪大学工学部で磁性材料の研究に励む。同大学院修了後は、知的財産の道へと進み社会で実績を積む。その経験を活かし独立後は、特許事務所、経営コンサルタント会社を相次いで創業した。今から数年前、転機が訪れる。2012年に台風で倒木した前途の「頼朝杉」を知り「これは、世界に向けて発信できるコンテンツだ」とすぐさま会社を設立。現在、名木のデータベース化を入り口に商品開発、イベント企画、情報発信と多岐にわたって事業を展開している。「コロナ前は摩耶山にもよくハイキングへ行きました。思えば歴史好きだった父親や神戸での日々が今の仕事に影響しているかもしれませんね。今後は行政、旅行会社、寺院仏閣と連携し地方創生や防災活動にも繋げていきたい」と抱負を語る。これからも名木を介してこころゆたかな社会を創造していく。第一〇九回人々の暮らしに寄り添い、歴史を紡ぐ名木に着目「銘木総研株式会社」代表取締役 前井宏之さん神戸のカクシボタンkakushi button写真/文 岡 力スローガンは「1本の名木から100年先のゆたかさへ」試行錯誤の末に完成した『源頼朝公像』(作:江里康慧)幼少期のお気に入りハイキングコースは「太陽と緑の道」(名木紹介)『妙勝寺の大くすの木』(淡路市釜口1163)参詣した足利尊氏の家来が樟を楠木正成に見立て切りつけたことで現在の樹形になったと伝承される。■岡力(おか りき)コラムニスト・放送作家ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆・テレビ、ラジオ番組を企画。連載「のぞき見雑記帳」(大阪日日新聞)「球友再会」(月刊神戸っ子)公式ホームページ107

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