KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年12月号
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今年4月、以前2度来日しKOBELCO大ホールに立った経験もあるドブリャンスカ・オレナさんが避難してきたのに続き、「日本は初めてで不安がいっぱいだった」というマラ・ヴァレリアさんとスタロドヴツェヴァ・イザベラ・アンナさんが神戸へやって来た。「ポートの街オデッサと同じように港や海がある神戸に来てもらえてよかった。少しずつ馴染んできているようです」と話すのは避難を呼びかけ渡航や生活支援、稽古場の確保などに尽力したコズロヴァ・ユリヤさん。オデッサのバレエ団で活躍した後、指導者として来日して20年、北区で暮らしている。「それぞれが最も美しいバレエを踊れるように」と振付・構成をし、自身も15年ぶりに舞台で踊った。決して十分とはいえない稽古で迎えた当日。「ウクライナのことを思うと心配でつらい毎日ですが、舞台に立つことは楽しくてやっと笑顔になれました。次は来年3月24日、芦屋ルナホールで日本人ダンサーと私たちで『ラ・ペリ』を踊ります。珍しい踊りで多分日本では初めての公演になると思います」とユリヤさん。「広いホールでたくさんのお客さんに観てもらえてとても嬉しい」とオレナさん、「日本の若いダンサーと舞台に立ててよかった」とヴァレリアさん、「楽しみながら踊れました」とアンナさん。そろって笑顔を見せてくれた。神戸・兵庫、そして関西を芸術の街にするお手伝いをしたいというユリヤさんは、「先が見えない状況だけれど、彼女たちも日本にいる限りはそれができます」と話している。祖国に残る同胞に伝えたいことを尋ねると3人はそろって「スラーヴァ・ウクライニ!(ウクライナに栄光あれ!)」と答えた。「戦争が終わり、祖国でまた幸せに暮らせる日が戻ってくると信じています」。芸術の力で祖国再建の役に立ちたいという強い意志とプロとしての誇りを持ち、今を懸命に生きているダンサーたち。ぜひ応援したい。73

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