KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年12月号
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「嘘八百 なにわ夢の陣」が、正月映画として1月6日に全国で封切られる。中井貴一、佐々木蔵之介という日本映画界屈指の実力派俳優が〝骨董コンビ〟を組んで美術界に挑み、騒動を巻き起こす「嘘八百」シリーズの第三弾。今井さんの盟友となった脚本家、足立紳さんとのコンビで三作品連続で共同脚本を書き上げた。メガホンを執るのは、こちらも三作続投の盟友、武正晴監督だ。新作の小説や映画に新譜…。これら創作物が、漫然とこの世に生まれることはない。いずれも創作者たちが大切に温め蓄えてきたアイデアや知識を駆使し、紡ぎ出された想像力の結晶だ。「新たな物語が始まる瞬間を見てみたい」。そんな好奇心の赴くままに創作秘話を聞きにゆこう。第25回は、脚本家の今井雅子(いまい・まさこ)さん。「自分を広げ世間を狭く」の精神が呼び寄せたシリーズ化…〝嘘八百〟の世界はどこまでが真実か?THESTORYBEGINS-vol.25■脚本家■今井 雅子さん⊘ 物語が始まる ⊘ができるかは、ほぼ設計段階の脚本で決まる―。監督や俳優と違って、ふだんはあまり目立つ機会のない裏方の存在だが、映像作品の出来の根幹を握る重責を担っている。それが脚本家なのだ。「それだけに…」と今井さんは前置きし、こう続けた。「少しでもより良い設計図を作るためになら、何十回だって書き直します。いい作品ができるなら、書き直す作業は少しも苦ではないですよ。加筆は足し算です」脚本を手掛けた最新作雌雄を決する脚本の力 「脚本とは、いわば、映画やドラマの設計図なんです。この設計図を基に、監督や俳優、スタッフたちは、ひとつの作品を完成させてゆくんです」映画「子ぎつねヘレン」や、NHK連続テレビ小説「てっぱん」など数々の名画や人気テレビドラマを手掛けてきた脚本家、今井さんは映像づくりにおける脚本の役割について、こう理路整然と説明する。つまり、どれだけ多くの人の心を魅了する映画やドラマ20

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