KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年12月号
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展覧会に絡んで毎回イベントを計画しているが、この展覧会の期間中にミニマルミュージックの巨匠テリー・ライリーさんとの絵画と音楽によるコラボが開催され、日本にも多い彼のファンがライブ会場に沢山足を運んでくれました。1967年にニューヨークでテリーさんのLPレコードを買って以来のファンですが、昨年、東京都現代美術館の個展「GENKYO」展に来られて、それ以来交流が続いています。これからも2人でジョイントコラボを企画していきますのでリクエストがあれば来神戸の可能性もあると思います。本展を見て作家の僕が気づいたことは、僕自身が如何に色に無頓着であったかということである。普段、絵を描くときは、そんなに色のことを考えない。目の前にある絵の具のチューブに無意識に手が伸びて、そこにあった色を使うという、ある意味でチャンスオペレーション(偶然の行為)によって気がついたら絵が描きあがっていたというわけだ。いちいち6色の色に分類して描いたわけではない。意図的に色を意識して描いたのは、赤のシリーズの作品と「Y字路」画面を真っ黒にしてしまったこの二種類の作品ぐらいである。黒い「Y字路」は如何に見えないものを見えるように描くかという、画家の一般的な論理に対して、「如何に見えるものを見えないようにする」実験として描いた作品群である。とにかく、一度足を運んでいただいて、学芸員の発想と作家の発想の差異を確認して遊び心で鑑賞していただければ楽しいのではないかと思う。美術家 横尾 忠則1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞受賞。令和2年度 東京都名誉都民顕彰ほか受賞・受章多数。3月に小説「原郷の森」(文藝春秋社)が刊行された。横尾忠則現代美術館にて開館10周年記念展「横尾さんのパレット」を開催中。http://www.tadanoriyokoo.com「横尾さんのパレット」展会場写真「横尾さんのパレット」展会場写真横尾忠則現代美術館にてテリー・ライリーさんのライブ(撮影・上原基章)17

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