KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年11月号
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のです。なのに、マスコミの印象操作で、誤解が多いのですね。確かに医師会は医師の労働組合的な側面もありますが、国民皆保険を守るという目的においては公の利益と一致しているのです。しかし、医師会はイメージと違って強くありません。ただ、医師会が弱ると財務省の意のままとなって国民皆保険も危機に陥ります。ですから国民皆保険を守るために、みなさまにはマスメディアやプロパガンダに惑わされずに、ぜひ自分の頭で素直に考えて判断していただきたいですね。そして、医師会や医療者も、パブリックディプロマシーを通じて市民のみなさまへ正しい情報を伝えていくべきではないかと思います。─そうなったら大変です。田中 皆保険制度の求心力はすなわち、国力でもあります。この求心力が失われた時、セーフティーネットの底が抜けて、日本は何世紀もの間立ち直れなくなるでしょう。逆に求心力が保たれていれば、少子高齢化で厳しい時代が続いても日本は必ず復活するでしょう。皆保険制度が崩壊すると、日本が他国に喰い物にされる可能性も考えられます。ある意味、皆保険制度は国家の安全保障でもあるのです。─どうすれば日本の良い医療を守ることができますか。田中 医師会は会員自身が会費を出し合って、日本の将来のために国民皆保険を守ろう としている団体です。言わば、有志が集まって自主的に結成された「町の火消し」のような存在な─私たち国民は、そのことを自覚していないように思います。田中 はい。まず、皆保険制度の急所は「求心力」にあります。求心力が維持できていない形だけの国民皆保険制度であれば、それは崩壊していると見なさなければいけません。国民皆保険制度で最も利益を得るのは日本国民自身です。しかしまさに今この共通認識が保たれているかどうか。もしこの制度で損をするかもと誤解する人が増えたら、求心力を失って医療者も国民も離れていき、制度崩壊を止められなくなるでしょう。ところが、財務省は短絡的な予算の数字合わせにこだわり、1か月の自己負担額が約10万円を超えた際にすべて国が負担してくれる高額療養制度の廃止まで言い始めています。これでは求心力を失うことになりかねません。95

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