KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年11月号
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キャラクターです。市川は結婚前に1冊書いたきり、結婚後は本を書いておらず、編集者の妻と創作での繋がりが持てずにいます。脚本執筆時に、妻を編集者など一緒に創作する人にするかどうか迷ったのですが、この作品は夫婦二人が向き合う話になるので、仕事でも距離の近い関係にしました。僕も、妻は映画監督(今泉かおり氏)ですが、僕の作品を全部観るようなタイプではないので、適度に興味を持たれていないのが実は大事な要素なのかもしれません。留亜のカレで、純粋すぎる青年、優二(倉悠貴)は自分のことが小説に書かれていることすら知らなかった訳で、だからこそ留亜も一緒にいて楽だし、バランスがいいのかも。もう1組の夫婦として登場するのが今泉作品常連の若葉竜也さんです。浮気をしているスポーツ選手役を演じるのに、もっとわかりやすく嫌なヤツを演じることもできるのですが、若葉さんは人間やキャラクターの読み解き方が表面的ではなく、深くて、毎回想像していた芝居を超えてくる。本当に特別な俳優です。何度もご一緒しているのに、若葉さんから「今泉さんにはよくない芝居は見抜かれるので、緊張します」と撮影初日に言われ、適度な無関心が生むバランス86

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