KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年11月号
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な、そこからある時、ワッと湧き上がってきて歌になります。私の歌は誰かの想い。歌いながら涙が出てきてしまうこともあります。お客様は歌に共感し、半﨑さんなら自分の気持ちをわかってくれると思うのでしょうね。『道の上で』の歌詞にありますね。「たった一人の味方に会えた」。だとしたら、歌う意味がありますね。誰しも悲しみや悩みをもっていながら、でもそれを言葉にすることなく生きています。普段、そういう負の感情を吐き出す機会ってないですものね。私の歌を聴いて「自分と同じ気持ちだな」とか「苦しいのは自分1人じゃない」とか思ってくれたら、私に話をしてくれた方の想いも救われる気がします。 この夏リリースされた『うた弁3』のリード曲『足並み』は„立ち止まる“人へのメッセ―ジですね。私自身、上京してから進むことだけを考えていました。止まってはいけない、成長しなければいけないと思っていました。皆さん、そうだと思うんです。「進むことがいいこと」。でも私はこの数年で、立ち止まったり、振り返ったりすることも必要だと思うようになりました。疲れてしまうこともあるし、生きていれば、悲しい別れや大きな悲しみがあることも。それで進めなくなる人もいます。そんな人に私は、“進もう”とは言えない。“歩き出すのは先でいい”と思うのです。「がんばろう!」「前に進もう!」という歌もあるけれど、私は、立ち止まる人のそばにいて歌いたい。私はそうしたい。そんな気持ちを歌っています。„足りないものなどない“と歌う『心の活路』はNHKラジオ深夜便のテーマ曲として反響を呼びました。深夜、今日から明日へ向かう時間に流れる曲なので、「明日も生きていこう」と思える歌を作りたかった。「どうしたら明日を生きたいと思うか」を考えた時、私なら「歌を歌えたらいいな」。私は生きている。歌を歌える。それだけですばらしいことですよね。不足しているところに目を向けてしまうけれど、生きていることへのありがたさ、歌えることへのありがたさ。試練もあるけれど明日も生きよう。自分への言葉にもなった歌です。『地球へ』は2005年に亡くなった歌手、本田美奈子さんが残した散文を原案として作った歌ですね。本田美奈子さんが残された散文はいくつもありました。どこか予言的で、自然との共生を願う言葉が並んでいました。虫の声や空の願い、海の祈りが聴こえる人だったのではないかと思います。環境問題に警鐘を鳴らすとかではなく、私たち自身が地球の一部であることへの意識をもっていたら言葉はなくても何か会話が生まれる気がする。地球が求めていることがわかってくる気がする。そんな歌になりました。ツアーのサブタイトル「~5周まわって立ち止まる~」32

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