KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年11月号
18/136

もの頃、大阪の親戚が郷里の西脇市に怪しげな手造りの石鹸を売るためにちんどん屋を連れてやってきたことがあったが、その会社が実は大阪の「青空宣伝社」であったことが、このちんどん屋通信社代表の林幸次郎さんが若い頃、修行していたという事実が判明したというエピソードによってわかった。担当の山本さんは「横尾研究の一頁に光を当てるエピソードになった」と大喜びしたようだ。この展覧会のあとの第21回展は「大公開制作劇場」〈本日、美術館で事件を起こす〉と題して、かつて行った各地での公開制作で描いた作品を一堂に集めた展覧会で、オープニングに公開制作を実演することになった。公開制作の切っ掛けは、1980年初頭に画家に転神戸で始まって 神戸で終る ㉜学校で使用する評価スタンプを壁に直に捺印した。作家が自作をこのように評価するということは、かつて展覧会では絶対見ることはできなかったと思う。このような型破りの展覧会は、一見冗談半分のようでもあったが、論理より感覚を重視し、聖俗が不可分に渾然一体となった様子は、そのまま僕の作品にも通じ合うものがあるように思えた。会期中に展覧会でNHKテレビSWITCHインタビュー達人達『横尾忠則×瀬古利彦』のロケが行われたのは、僕は画家と言うよりアスリートに近い感覚で制作するので、マラソンの瀬古さんに来館いただいて、対談することになった。またオープニングにサプライズ登場のちんどん屋は、僕の子ど第20回展の「在庫一掃大放出展」は国内の美術館での個展に代表作が展示されるために、神戸の美術館から沢山の作品が貸し出されるため、在庫作品が手薄になる。そこで今まであまり展示されなかった作品にこの際、陽の目を当てようと企画された展覧会が本展である。 この展覧会を担当したのは学芸課長の山本淳夫さんで、あえて特定のテーマを設けずに、美術館を特売セール会場に見立て、受付監視スタッフはオリジナルの「SALE」法被を着用し、開会式にはちんどん屋(ちんどん通信社)が乱入するという演出を図った。展示会場の壁面には手書きの作品解説を添付し、作品の脇には「よくできました」「もっとがんばりましょう」等の小Tadanori Yokoo美術家横尾 忠則撮影:山田 ミユキ18

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る