KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年11月号
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(開拓者)だった。彼は少年少女たちの人生を変えるような漫画の新作を次々と発表していくが、生きる指針を与えられたのは子供たちだけではなかった。 「三国志」や「史記」など中国の歴史をテーマにした壮大な長編大作にも挑み、若者や大人向けの「列伝」というジャンルも開拓していく。彼は漫画やアニメの可能性を信じ、常識やその概念を打ち破っていく時代のチャレンジャー(挑戦者)でもあった。鉄人28号が誕生し、今年で66年。世界に開かれた神戸の海を彷彿とさせるダークブルーの鋼鉄の雄姿は今も健在。“神戸の守り神”として力強く踏ん張り続けている。=続く (戸津井康之)京で会っている。このとき、横山の漫画原稿を見た手塚は「売れる漫画家になる」と語ったという。横山は神様のような存在だった手塚のこの言葉に自信を持ち、その直後、プロデビューするが、このときも手塚は、「彼ほど『彗星のように』という形容のあてはまる男はいない」と横山の作品を絶賛し、デビューを喜んだという。デビュー翌年、雑誌「少年」で連載された「鉄人28号」は、同誌で連載されていた手塚の「鉄腕アトム」と人気を二分する。手塚に憧れ、神戸から上京し、手塚作品のアシスタントも務めた後輩が、デビュー直後に、大先輩である漫画の神様とともに日本を代表する漫画家へと上り詰めていく。手塚は、若き横山と出会った瞬間に、その可能性を確信していたのだろう。少年少女の心を鼓舞横山は「鉄人28号」で日本中の少年たちの心を鼓舞したが、一方で、日本中の少女の心も魅了していく。1966年7月、少女漫画雑誌「りぼん」で連載をスタートした「魔法使いサリー」(連載開始当初のタイトルは「魔法使いサニー」)だ。日本初の少女向けテレビアニメとして同年12月から放送を開始。これが先駆けとなり、その後、「ひみつのアッコちゃん」(赤塚不二夫原作)や「さるとびエッちゃん」(石ノ森章太郎原作)など東映の“魔女っ子シリーズ”へとつながっていく。「鉄人28号」がロボットアニメのブームの先駆けとなり、片や「魔法使いサリー」が、魔女っ子ブームを巻き起こす。横山は漫画やアニメにおける未開のジャンルを次々と掘り起こし、切り開いていくパイオニア131

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