KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年11月号
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元町映画館神戸市中央区元町通4-1-1266席+1(車椅子)TEL.078-366-2636https://www.motoei.com/presents2006年から岡山県真庭市の山あいに移住し、農業を営みながら映画を撮り続けている山崎樹一郎監督。元町映画館でも長編デビュー作『ひかりのおと』、第2作『新しき民』を上映、応援し続けている映画監督だ。最新作となる『やまぶき』は、今年のカンヌ国際映画祭ACID部門に日本映画として初めて選出される快挙を達成した。全編16ミリフィルムで撮影され、独特の陰影とざらついた感触を覚える映像にも注目してほしい。乗馬界のホープだったものの、父の会社の借金を返済するため、真庭に流れ着き、ベトナム人らと採石場で働く韓国人のチャンス(カン・ユンス)。警察官の父(川瀬陽太)と二人暮らしで、サイレントスタンディングをはじめる高校生のやまぶき(祷キララ)。チャンスは母国への仕送りと真庭での新しい家族のために奮闘するものの不条理な出来事が襲いかかり、やまぶきの周りにも変化が起き始める。劇中で度々挿入される、小さな黄色の花を咲かせるやまぶきは、人目につかないところであり続ける存在として捉えられる一方、賄賂の隠語でもあることが本作を象徴している。地方都市で暮らす多様な人々を丁寧に描きながら、日本が抱え続けてきた問題へ静かに警鐘を鳴らす作品。「あなたならどうする?」と問いかけられているような、抗う人たちの声が胸に残った。text.江口由美vol.11〜今月の1本〜地方から抗う人たちのブルース<その他の注目作>11月5日より、神戸映画資料館が初配給するサイレントコメディ映画『NOBODY KNOWS チャーリー・バワーズ –発明中毒篇–』を2週間上映します。キテレツだけど、どこかシュールでリアルな発明王、チャーリー・バワーズにぜひ出会ってください !■『やまぶき』(2022年 日本=フランス 97分)監督・脚本・プロデューサー:山崎樹一郎出演:カン・ユンス、祷キララ、川瀬陽太、和田光沙、三浦誠己、青木崇高、黒住尚生、桜まゆみ配給:boid/VOICE OF GHOST元町映画館にて11月12日(土)より2週間上映。©2022 FILM UNION MANIWA SURVIVANCE上映スケジュールはコチラ▶やまぶき102

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