KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年10月号
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に医師であることを示すために医師免許を画面に表示すると悪用される危険もあります。利用者側も、特に高齢者はパソコンやスマートフォンなどを使いこなすことが難しいので、現実的にインフラ面でオンライン診療が難しいというのも課題です。─コストの面はいかがですか。飯山 医療機関側は設備投資やスキル習得のための費用など導入のための経済的・時間的コストが負担になる一方で、診療報酬は対面診療より低く、さらに利用者も少ないため、費用対効果に課題があるようです。また、患者さんに医療費の自己負担分をどうやって請求・回収するかも課題です。─業者が提供するオンライン医療ツールを利用すれば良いのではないでしょうか。飯山 確かにオンライン医療ツールは便利で、診療時に自己負担金を請求することも可能ですし、お薬を直接郵送するシステムなどサービス面でもメリットはあります。一方で、医療機関のみならず、患者さんからも手数料を徴収するので、自己負担金が増えてしまいます。また、業者が乱立状態である一方、登録制や許可制ではないためその質の見きわめが難しく、悪意ある業者による情報漏洩などの可能性も否定できません。─国民皆保険制度との関係についてはどう思われますか。飯山 国民皆保険制度の意義を鑑みますと、フリーアクセスが原則ですので、希望すれば誰でも全国どこの医療機関でもオンライン診療を受診することが可能であるということになります。と言うことは、オンライン診療を保険診療として初診から購入的に認めるには、国民が等しくオンライン診療を受けることができる環境の整備が必要ではないかと思います。─特に高齢者は端末を使いこなせない人が多いですから、オンライン診療の平等性が担保されるのはまだ少し早いのかもしれませんね。飯山 現状ではスマホやタブレットですべておこなうというのは時期尚早で、誰もが馴染みやすい媒体を利用することも考えるべきでしょうね。一方でオンライン診療はパンデミックや災害などの非常時に全国民が等しく必要な医療を受けることができる仕組みの第一歩になることができると思います。そのためには医療側も受診者側もストレスフリーであるような仕組みが求められます。今後、国によってそのようなシステムが構築されることを期待しつつ、それを受けて医療側も適切な形で使われるようなスキームを提案することで、医療の質を担保できるオンライン診療が可能になるといいですね。99

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