KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年10月号
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いなかった。しかし、中高生になって、伝説の漫画雑誌『ガロ』に掲載された短編などを読みだすと、そこに描かれた水木マンガの深遠なストーリー、名セリフ、独特の人物描写にすっかり取り憑かれ、以後、50年以上にわたって依存症患者のように水木マンガを愛読し続けている。その魅力はおいおい伝えていくとして、まず第1回は「KOBECCO」にふさ水木しげると言えば妖怪マンガの大家で、代表作は「ゲゲゲの鬼太郎」「悪魔くん」「河童の三平」と思っている人が多いのではないか。それは水木しげるのほんの氷山の一角で、水面下には驚くべき慧眼、哲学、人生への鋭い洞察が隠されている。かく言う私も、子どものころは鬼太郎や悪魔くんのみに親しんで、水木しげるのほんとうの魅力には気づいてわしい水木しげるのペンネームの由来について語るとしよう。それはまさに神戸に縁があるからだ。水木しげる、本名武良茂は、大正13年(1922年)に大阪市住吉区に生まれ、すぐに両親の故郷、鳥取県境港に移って、そこで幼少期をすごす。昭和18年に徴兵され、南方のラバウルに派遣されて、爆撃で左腕を失うという大けがをしながら、昭和知られざる  水木しげる水木しげる生誕100周年記念ペンネームの由来PROFILE久坂部 羊 (くさかべ よう)1955年大阪府生まれ。小説家・医師。大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院にて外科および麻酔科を研修。その後、大阪府立成人病センターで麻酔科、神戸掖済会病院で一般外科、在外公館で医務官として勤務。同人誌「VIKING」での活動を経て、『廃用身』(2003年)で作家デビュー。vol.138

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