KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年10月号
26/136

はじめての絵本なので力みがないわけではないと思います(笑)。ただ、この絵本は、落ちていたスケッチブックを広げていくストーリーなので、スケッチブックの中に描かれてある絵に物語としての繋がりはなくても成立します。そういう意味で、その当時描きたいものをわりと楽しんで描けたのかもしれないですね。持ちつつ、個展を開催したりイラストレーションの仕事をしていくなかでの出会いで、少しずついろんな方とのご縁も広がっていきました。そうした中で、ゴブリン書房の方に声をかけていただき、一作目の絵本『スケッチブック』を作ることになりました。―余白が魅力です。第1作ですが、力みがないですね。―一方、『マーガレットとクリスマスのおくりもの』と『まじょのデイジー』は、絵本の王道的な要素を盛り込みながらも、動物たちと友達になるなど、植田さんらしさを感じるものがたりです。場所や風景には何かしらの息遣いや気配があり、それを探っていくと、風が吹いたり、草の匂いがしたりと物語性が存在します。それを絵と文章を組み合わせながら、そこから立ち上がるものを表現できたらと思いました。それぞれの絵本の題材に対し、どのような表現がいいのか。言葉の選び方や、色遣いなど、好きなことの中で試行錯誤をしていますね。―今までのキャリアの中でターニングポイントになる出来事は?2011年、東日本大震災が起きた時、今まで以上に何を選び何を選ばないのかといった暮らし方そのものを一つ一つ見直しました。たまたま僕と妻は、神戸への移住で絵に変化シェアオフィス『ロコノマド』のワークスペース。「“六甲山で描く”ことを大切にしたかった」と数日通って制作した壁画。26

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る