篤な疾患の治療を同時に進めなくてはならないケース、比較的若くて早期に診断して十分な治療を受けるべき患者さんなどがおられます。さらに産婦人科と連携して、統合失調症や他の精神疾患を合併した妊産婦さんの出産をサポートしています。―統合失調症や気分障害の診断方法は?一般的な血液検査やMRI、CTのような画像診断などという診断基準はありません。基本的にはご本人が体験している自覚症状を聞き取り、患者さんの言動や行動を私たち専門医が客観的に見ます。症状をいくつかのカテゴリーに分けて、どういった症状がどの程度当てはまるかによって診断します。幻覚や妄想、思考の障害などの項目に当てはまる場合は「統合失調症」、気分の落ち込みがひどくて気力がなくなっていたり、悲観的に考えていたりしたら気分障害の中のうつ病、気分の上がり下がりが激しい場合は双極性障害などと診断します。―2つはよく似た病気なのですか。統合失調症は知覚や思考に関わる病気で、気分の上がり下がりに関わる気分障害とは違う病気であるにもかかわらず、かなりオーバーラップする部分があります。統合失調症の患者さんに気分の上がり下がりがあったり、双極性障害の患者さんのうつ状態がひどくなるとあり得ない悲観的な妄想を持ったり、躁の状態になると誇大妄想を描いたりするケースもあります。―どちらも原因は限定できないのですか。一般的に精神疾患の病態には生物学的「バイオ」、心理「サイコ」、社会や環境「ソーシャル」、この3つが混じり合っています。その人、その病気によって比重は違います。統合失調症や気分障害の中でも特に双極性障害に限定していえば、脳の状態が大きく関わっていると考えられています。しかし、脳のどこがどうなっているのかは今のところ詳しくは分かっていません。―いわゆる遺伝病ともいわれていますが…。遺伝的要素が高いといわれていますが、そうだとすれば100パーセント遺伝子が同じ一卵性双生児の一人が統合失調症なら、もう一人も100パーセントそうなるはずです。ところが一致率は約50パーセントです。これは、脳や遺伝子で決定されるものが一定の確率であるのは確かでも、その人の周りの環境や育ち方によって発症することなく人生を送れる可能性も大きいということです。―環境や育ち方とは?たくさんの要素があると思います。幼いころ親から受けた愛情、日常的な人間関係の中で培われてきた必要最低限の苦労や人に対する信頼感、葛藤やそれを通した成長な102
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