KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年9月号
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PHRの活用も進むでしょう。リアルドクターでなくドクターアバターが診察するようになるかもしれません。10年後は画像診断支援だけでなく、顔認証から認知症やがんなどの疾患の診断、眼底所見から認知症や脳の疾患の診断など、意外な診断手法が多く出てくるかもしれません。画像検査自体の非接触化・遠隔化が進み、予後予測や重症化リスク予測もAIがおこなうようになるでしょう。オンライン診療はAIとは異なりますがAI医療を加速する鍵となるツールになると思います。―治療に関してはいかがでしょうか。木村 現在もニコチン依存症治療アプリや高血圧症治療アプリが薬事承認を受けています。10年後には糖尿病・うつ病・発達障害・アルコール依存症など多くの領域の治療アプリが薬事承認を受けているでしょう。お薬も近々電子処方箋が出てきますが、10年後は創薬においてAIが有効な物質をリストアッ─AI医療が普及していくと、医師の仕事は変わりそうですね。木村 AIが人の仕事を奪うという見解もありますが、他方でAIの普及によって人がより付加価値の高い仕事にシフトしていくともいわれています。今後の医師の役割は、AIを使いこなしAIが導き出した結果の妥当性を判定する、新しい医療を創造する、AIを使わない場面でも患者に寄り添い様々なコンサルテーションをするなど、医師の役割が変わっていくのではないでしょうか。─AIによる診察や診断は現在も普及しつつありますね?木村 多くのクリニックでAI問診を採用し始めています。AIによる画像診断支援はかなり発展し、社会実装されているものも増えています。AIによるゲノム解析も実用化され、テーラーメイド医療や精密医療に向けて期待されています。アメリカでは糖尿病性網膜症AI自動診断システムが2018年に承認を受け、眼科医の診断は不要となっています。ウェアラブルデバイスによるバイタルチェックや生活睡眠状況のチェックは既にかなり進んでいます。顔認証システムも普及してきています。─AIにより10年後の医療はどう変わるのでしょう?木村 大きく変化するでしょうね(表1)。10年後には、診察の場面では診察道具のAI化・遠隔化が進むと思います。医師と患者様の会話を音声認識システムによりカルテ入力し、AIが重要な情報を選択・抽出した上で医療における 標準的な記載に変換するようになるので、カルテは医師が入力するのではなくAIが自動的に整理・記載するようになるでしょう。 センシング技術が日常生活の各場面に普及し、至る所で常時バイタルチェックや身体状況のチェックができるようになっていることでしょう。多くの生体情報が集められ、パーソナルヘルスレコード、つまり、81

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