一千万映画だったし、君もそうだけど、何かに向かって闘う人間を描くのが映画だ」と言われた。大島さんの親友で『愛のコリーダ』(76年)の制作者でもある若松孝二先輩には「あのチンピラたちはどいつもこいつも元気で痛快だな。オレには無理だ」と苦笑された。テント上映だろうが、映画界の先鋭たちに勇気づけられると嬉しかった。そうか、闘う人間か。映画雑誌に取材される機会も増えていたが、その度に、ボクは何と闘えばいいんだろうかと自問自答を繰り返し81年、東京でも『ガキ帝国』の公開が始まり、代々木公園の一隅の空き地に建てた特設テントでの上映とは流石に面食らったが、配給会社のATGから、これも新しい時代の試みですと言われて、まあ良しとするかと思い直した。でも、これからも頑張って映画を作れよ、他に何をするつもりだ、せっかく切り開いた道だぞと、ボクの背中を押してくれる人も何人かいた。大島渚先輩からは「僕がATGで初めて撮った『絞死刑』は死刑制度問題と在日朝鮮人を描いたたものだった。梅雨のある日、東映の制作部から電話がかかった。「明日、銀座本社に来れない?」。ボクは二つ返事で「伺います」と答えた。翌日、広い会議室で一人待っていると「ああどうも」と忙しそうに入ってきたのは制作本部長だった。「君のシャシン(映画)を先日、札幌の小屋(映画館)で見たんだけど、あの題名のガキって響きがいいから、あれだけ変えないで、何か副題も考えて、あんな風な若い連中がとにかく喧嘩して暴れまくる話で、続きでも何で井筒 和幸映画を かんがえるvol.18PROFILE井筒 和幸1952年奈良県生まれ。奈良県奈良高等学校在学中から映画製作を開始。8mm映画『オレたちに明日はない』、卒業後に16mm『戦争を知らんガキ』を製作。1981年『ガキ帝国』で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、『みゆき』『二代目はクリスチャン』『犬死にせしもの』『宇宙の法則』『突然炎のごとく』『岸和田少年愚連隊』『のど自慢』『ゲロッパ!』『パッチギ!』など、様々な社会派エンターテイメント作品を作り続けている。映画『無頼』セルDVD発売中。54
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