KOBECCO(月刊 神戸っ子) 2022年9月号
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─色と言えば、現在開催中の「横尾さんのパレット」展。展示室を壁ごと「赤」「青」「黄」「緑」「黒」に塗替え、パレットに見立てています。今回の担当は平林さん。平林 あまり論理的には考えていないんです。シンプルなルールを作って色分けしたら、色の配置は作品が決めてくれました。展示に遊び心を入れて、誰もがみてわかる仕掛け、じっくり見ればわかる仕掛け、すごくマニアックな仕掛けを混ぜて、自分自身も楽しんでいます。 いい意味で図面通りにはいかなくて、実際に展示してから並べ替えをしたり、仕掛けを思いついたり、作品の力に刺激をうけました。小野 横尾さんを象徴する色でもある「赤」を背景も「赤」で観られるのは素晴らしいです。赤の向こうに「緑」が見えて、それがまた鮮やか。平林 近年多く使われている「黄」は「寒山拾得」シリーズもポスターが毎回ものすごくカッコイイのができてくるから、やっぱり横尾さんはすごいなぁって最後は感心して「これでよかった」になります。小野 ポスターもカタログもかっこいいですね。特にカタログは横尾さんの意見を聞きながら、時間をかけて製作。昨年ここに異動してきて、横尾さんの情熱に驚きました。山本 僕もここまでシビアな人は初めてです。横尾さんにとってポスターは特に作品です。もともと日本のトップのグラフィックデザイナーですから印刷物に関してはプロです。平林 横尾さんのカタログ作りは展覧会1本抱えるのと同じくらいの熱量と緊張感が必要です。たとえば実物の色は絶対に出せないし、バランスが難しい。小野 必ずしも実物と同じを求めているわけではないですよね。カタログの中でどう見えるかが重要で、実際の色とは別物として考えている。山本 ご自分のことを“色音痴”って言いますが全然音痴じゃない。色彩感覚がとんでもないから。初期のポスターは2色や3色しか使っていない作品があって、春日八郎さんのポスターは有名ですけど、色の印象、コントラストがスゴイの。こんなことできる人は天才。色音痴の真相は天才です。平林 そもそも横尾さんの言う“音痴”は悪い意味ではないんじゃないかな。「ルールには縛られませんよ」「自由にやりますよ」。それを音痴と表現しているのかもしれませんね。私たちの方が“音痴”と言う言葉に縛られすぎているのかも。16

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